001総教C030705H30馬場最終稿
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これら5つの技法のほかに,学級SSTを行う上で有効と思われる手法としてロールプレイが挙げられる。ロールプレイとは現実場面を想定して役を演じ疑似体験をすることで,ある事柄が実際に起こったときに適切に対応できるようにする学習方法である。①や③の中で用いられることが多い。対象の児童生徒にとって想像可能な具体的な場面設定や役を演じやすい環境設定を行い,その中で繰返し体験することが重要であると考える。 70 聞かせて③させてみて④褒めて 助言し⑤使わせる」と言い替えた。一見すると複雑そうに思えるSSTの専門用語を平易な言葉に置き換えることで,学級担任のSSTに取り組む際の抵抗感を緩和し,取り組みやすさを高めることにつながると考える。 それぞれの段階の本研究での位置付けは以下の通りである。 ①やってみせ ソーシャルスキルを使用する場面を視覚的に示し,それを観察させること。後述する現実場面を想定して役を演じ疑似体験する方法(以下:ロールプレイ)を用いて,対象児童生徒に演じさせたり,指導者が演じたりして示すこともあるが,場面に合わせて写真や映像,イラスト等を用いて行うことや,実際の活動の中で生起した出来事や仲間の言動をモデルとすることもできる。また,適切なスキルと対比させるために不適切なスキルを示すこともある。適切なモデルであっても現実場面では他者に拒否されることがあるので,拒否された時にどうすればよいかという情報までを含めて提示する必要があると考える。 ②言って聞かせて 必要なソーシャルスキルを発揮するためのコツを説明し,理解させること。SSTの中の様々な場面で繰り返し行うことができる。困りを抱える児童生徒の中には言語面につまずきをもち,これを苦手とする子どもも多いため,言語という単一の方法だけではなく,視覚や触覚などその他の感覚も併用して情報を与えることが大切であると考える。特定のソーシャルスキルがどのように機能するか,ソーシャルスキルを用いた結果どのようなことが起こりうるかといった情報を与えることにより,SSTで身に付けるスキルがより明らかとなり,対象児童生徒の意欲喚起にもつながると考える。 ③させてみて ①②で得た知識・イメージを練習させること。SSTで不可欠となる体験の確保につながる技法である。SST実施の方法によって模擬場面で行うか,実際の場面で行うかに分かれる。ゲームの中でスキル練習をしたり,ワークシートを用いて練習したり,ロールプレイを用いることもある。 小学校 総合育成支援教育 8 困りを抱える児童生徒の場合,疑似体験だけではスキルの般化につながりにくい場合があるので,同じスキルを様々な場面や相手で練習することのできる多層的な取組を行う。 ④褒めて 助言し 対象児童生徒の見せる言動に対して,どのような行動をしたからどんな結果につながったか,を具体的に伝えること。スキルを対象児童生徒に身に付けさせるために用いる技法で,肯定することと修正を求めることの2つに大別できる。この2つを児童生徒の実態に合わせて組み合わせて用い,行動を起こす前にどうすればよいか手がかりを教えたり,理想的な行動を細分化し,易しいものから順に習得させたりすることで望ましい行動を増やしたり,望ましくない行動を減らしたりする技法である。 ⑤使わせる 教えたスキルが指導場面以外の場所や相手であっても用いられるように指導者が促しスキルの使用頻度や適応場面を増やすこと。学んだことをいつ,どこでやってみるかを助言したり話し合ったりすること,機会があるごとに教えたスキルを思い出させたりすることが考えられる。 SSTでは,指導場面ではスキルを発揮できるのに,日常場面ではうまくいかないといった般化の段階での問題が少なからず起こる。そこで,学んだソーシャルスキルを使用する場面や回数を保障することが不可欠であると考える。また,学んだスキルを現実の場面で試みる機会を意図的に与えたり,SST場面以外の社会的場面でアドバイスをもらえる機会を設けたりすることで,スキル活用回数を増やし,その中で成功体験を重ねることが大切であると考える。 困りを抱える児童生徒を対象とする場合は,その時の本人の状態や周囲の状況によって参加しに

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