001総教C030705H29最終稿(河合)
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られる。その際,子供自身が自分の思考の過程をたどり,自分が理解したり表現したりした言葉を,創造的・論理的思考の側面,感性・情緒の側面,他者とのコミュニケーションの側面からどのように捉えたのか問い直して,理解し直したり表現し直したりしながら思いや考えを深めることが重要であり,特に,思考を深めたり活性化させたりしていくための語彙を豊かにすることなどが重要である。 (下線は筆者による) (前略)特に,学習を振り返る際,子供自身が自分の学びや変容を見取り自分の学びを自覚することができ,説明したり評価したりすることができるようになることが重要である。 (下線部は筆者による) 生徒自身が自分の思考をたどり,自分のとらえ 方を問い直しながら思いや考えを深めることが重要であると記されているが,そのような活動を生徒自身が行おうとしたとき,話したことを思い出しながら行うのは難しく,その場面での考えが目に見える形で残っている方が考えやすいだろう。せっかく頭の中で思考し判断し,表現したのに,あのときどうだったかなと曖昧になってしまっては問い直すことも,吟味することも,見取ることも難しくなる。だからこそ「書くという表出方法」なのである。さらに,書くという活動をすること自体,頭の中を整理することにもつながり,内言を外言化する力を養っていくことにもなると考えている。 以上が本研究における書くという表出方法の意義であるため,指導事項の「書くこと」とは異なることを明記しておく。本研究での書くということは,自分の考えや思いをとにかく書き出してみようというものであるため,書き方にはこだわらない場面も多い。 (2)生徒の自己評価―振返り 答申には,国語科の「主体的な学びの視点」として以下のように記されている(16)。 学習を通して何を得て,どのように変化してい ったのかということを知ることで,前とは違う自 分,一歩進んだ自分を実感できる。その実感が「学びの自覚」であると考えている。本研究での生徒の自己評価とは,そのような自覚を得られる振返りのことを指している。生徒自身が授業でどのような力が身に付いたか自覚できれば,次の学びへ向かうことができ,「学びへ向かう力」も育っていくだろう。 本研究での自己評価とは生徒自身が自分の学びや考えの変化を見取る振返りのことであるが,振(前略)互いの知見や考えを伝え合ったり議論したり協働したりすることや,本を通して作者の考えに触れ自分の考えに生かすことなどを通して,互いの知見や考えを広げたり,深めたり高めたりする言語活動を行う学習場面を計画的に設けることなどが考えられる。 中学校 国語教育 7 (下線部は筆者による) 返りといっても幅広い意味がある。実践では二つの振返りを取り入れている。一つ目は課題aに対する学習の振返り,二つ目は,課題Aに対する学習の振返りである。今回は,特に課題Aに対する学習の振返りに重点を当てて研究を進めた。課題Aに対する学習の振返りとは,最初の自分の考えと学習終了後の自分の考えを比較し,どのような変化があったか見取るものである。研究構造図に示した課題aに対する振返りも大切だが,生徒が学びの自覚を得るためには,ある程度の期間が必要であると考えている。最初に表出したものと最後に表出したものを見比べるという活動は1時間ごとの学びではなく,ある程度の時間を経た学びであるため,学びの自覚もより得られるのではないかと考えた。この自分での振返りに,他者からもコメントをもらうことで自分では気付かなかった学びの発見にもつながり,より強く学びの自覚も得られるのではないかと考えている。 (3)対話について 本研究では最初の自分と学習後の自分を見比べる振返りを中心として進めていくと述べたが,生徒の変容を目指すとき,自分一人で考え続けるのではなく,他者との交流をしながら自分の考えを広げ,深めていくことが必要である。答申には,国語科の「対話的な学びの視点」として以下のように記されている(17)。 対話をする大きな目的は,対話を通して自分の考えを広げたり,深めたり,高めたりすることであるととらえられる。自分で考え,自分の言葉で伝えること,対話を通して自分の言葉を豊かにし,考えを深めたり広げたりすることは,本研究における「学びへ向かう力」とも一致する。さらに,前述したように,「読むこと」の学習では,テキスト,他者,自己の三つの対話が繰り返される。テキストとの対話では作者の言葉と向き合い,他者との対話では自分以外の誰かの言葉と向き合い.自己との対話では自分の言葉と向き合うことになるのである。それぞれの言葉と向き合う中で,作者と自分,他者と自分,過去の自分と今の自分をつなげながら,言葉を豊かにし,考えを広げ深め

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