身が授業を通して自分の変化や伸びを自覚できることが不可欠であると考えている。そして,この学びの自覚には,生徒自身による振返りと教師による支援や評価が必要となる。この振返りや支援,評価を行っていく上で,書くという表出方法が有効であると考える。このことを踏まえて,本研究の仮説を以下のようなものとした。 「書くという表出方法」によって,自分の考えの変化やそこに至るまでの過程を生徒自身が見取ることができる。その結果,生徒自身が何を学んだのかという「学びの自覚」を得ることができ,「学びへ向かう力」も育まれていくのではないか。 下図2-1は,仮説をもとにした研究構造図であ る。「課題a」という部分があるが,目標を達成するための最も大きな課題を課題Aとしたとき,課題Aの解決の手立てとして考える課題を課題aとした。本研究は,構造図にある書くという表出方法,生徒の振返り,対話,教師の支援・評価という4点に重点をおいている。第1節で,四つの重点について述べ,第2節では,授業実践での具体的なポイントについて述べる。 第1節 本研究における四つの重点 (1)書くという表出方法について 生徒が学ぼうという意欲をもつためには,授業を通して学びの自覚を得ることが必要であり,学びの自覚を獲得するために生徒自身による振返りや教師の支援・評価が不可欠であると述べたが,特に生徒自身の振返りが重要であると考えている。この振返りを有意義なものとするために,書くという表出方法によって自分の考えを可視化すると いう手立てが有効であると考えている。 自分の考えを「伝える」ことに課題があると述 べたが,伝える方法としては「話す」と「書く」という表出方法がある。今回「話す」ではなく,「書く」という表出方法を選んだのは,自分の考えを書き出すことで,そのときの考えが見え,後に残していくことができるからである。自分の変容や学びを振り返るとき,後から自分の前の考えと今の考え,他の人の考えなどを見返すことになる。その活動は書いて残したものを見て考えることで,より価値あるものになる。 また,人は誰でも,まず頭の中で考えたり,思ったりするが,そのときすでに自分の言葉を使っている。この頭の中にある言葉を内言と呼ぶ。内言を誰かに伝えようとするとき,考えを整理して話したり書いたりする。この誰かに伝えるために外に表出する言葉を外言と呼ぶ。つまり国語科における「学びへ向かう力」を育てていくためには,内言をどのように生み出すか(最初に自分の考えをどのようにもつか)ということと内言をどのように整理して上手く外言化していくのかという二つの課題を克服していく必要があるとも言い換えられる。この二つの課題を克服するためには,外言化した内容がその場限りで消えてしまう「話す」ということよりも,後に残る「書く」という方法の方が分かりやすく,効果的であると考えている。この内言を外言化することを繰り返す活動は,国語科における「深い学び」にもつながると考えている。 答申には,国語科の「深い学びの視点」として 次のように記されている(15)。 図2-1 研究構造図 (前略)言葉で理解したり表現したりしながら自分の思いや考えを広げ深める学習活動を設けることなどが考え 中学校 国語教育 6
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