図1-3 話し合いによる深まりや広がりに関する回答結果 「学びに向かう力」と「学びへ向かう力」の違いを述べ,「学びへ向かう力」とは「学びに向かう力」も含めた三つの資質・能力の土台となるものと述べた(p2)。三つの資質・能力のうち,「学びに向かう力・人間性等」との関連性が最も強く,その土台であるということは,大きな枠組みである「学びに向かう力」に「学びへ向かう力」も含まれているということでもある。そのように考えると,下線部の部分は,国語の授業において育てる「学びへ向かう力」の具体的な内容だと言える。 下線部①の部分は,言葉を通して自分で考えたり,感じたりすること,下線部②の部分は,他者との交流を通して考えを広げたり深めたりすること,下線部③の部分は,テキストと向き合うことで新たな見方や考え方を獲得することに関わっている。このことから,国語科の授業における意欲とは,言葉を通じて自分で考え,考えや思いを表現しようとし,他者と交流したり,テキストに向き合ったりすることを通して,自分の見方や考え方を広げ深めようとすることであるととらえられる。そして,それが国語科における「学びへ向かう力」であると考えている。その力を育てるためにも,生徒が自分の言葉で伝えたい,交流を通して見方や考え方を広げ,深めたいと思える授業・評価について考えていくことが重要だと考えている。 第2節 現状と課題-全国学力・学習状況調査より- (1)「学びへ向かう力」に関する現状と課題 前節で,自分の言葉で自分の考えを伝えようとすること,他者との交流を通して自分の考えを広げ深めようとすることが「学びへ向かう力」だと述べた。国語科で身に付けさせたい力に関わる実態を,平成29年度全国学力・学習状況調査の生徒質問紙と学校質問紙によるアンケート結果から見ていきたい。 図1-3は,生徒質問紙「生徒の間で話し合う活動を通じて,自分の考えを深めたり,広げたりでき解を深め,尊重しようとする態度 ・①我が国の言語文化を享受し,生活や社会の中で活用し,継承・発展させようとする態度 ・自ら進んで読書をし,③本の世界を想像したり味わったりするとともに,読書を通して様々な世界に触れ,これを疑似的に体験したり知識を獲得したり新しい考えに出会ったりするなどして,人生を豊かにしようとする態度 (番号,下線部は筆者による) ていると思うか」という項目と,学校質問紙「生徒は,学級やグループでの話合いなどの活動で,自分の考えを深めたり,広げたりすることができていると思うか」という項目に対する回答結果を示したものである(7)。 生徒も指導者も約70%が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答していることが分かる。一方で,生徒の35%近く,指導者の25%以上が「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」と回答しており,学級で3人から4人に1人は有意義な話し合いができていないということになる。グループで話し合いを行う場合,3人から4人が多いことを考えると,一つのグループの中で1人もしくは2人は考えを広げたり深めたりできていないとも言える。このような結果が出た理由として,生徒自身が意欲をもてていない,全ての生徒が積極的に話し合いをするための手立てが十分でないなどが考えられる。 また,自分の考えをもって話し合いに臨んではいるが他者の考えと上手くつなげられなかったり,そもそも自分の考えを十分にもてないまま話し合い活動に入っていたりすることも考えられる。まず生徒一人一人が自分の考えをもてるようにすること,課題設定の在り方など意味ある話し合いにするための具体的な手立てが有効なのか考えることが課題であると言えるだろう。 次ページ図1-4は,生徒質問紙「生徒の間で話し合う活動では,話し合う内容を理解して,相手の考えを最後まで聞き,自分の考えをしっかり伝えていたと思うか」「学校の授業などで,自分の考えを他の人に説明したり,文章に書いたりすることは難しいと思うか」という項目に対する回答結果を示したものである(8)。 生徒質問紙の結果から,話し合いにおいて相手 の考えを聞き,自分の考えを上手く伝えられない 生徒 19.8 学校 11.2 そう思う 8.1 どちらかといえばそう思う どちらかといえばそう思わない 0.6 そう思わない n=1,023,817 n=9,982 0% 中学校 国語教育 3 45 26.6 62.4 25.9 50%100%
元のページ ../index.html#5