001総教C030705H29最終稿(河合)
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図1-1 育成を目指す資質・能力の三つの柱 図1-2「学びへ向かう力」と育成すべき三つの資質・能力 新学習指導要領において育成すべき資質・能力として「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう・人間性等」が挙げられていることが分かる。また,同じく補足資料において,学習指導要領改訂の方向性として「生きて働く知識・技能の習得」「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等の育成」「学びを人生や社会に生かそうとする学びに向かう力・人間性等の涵養」と示されている(5)。「学びを人生や社会に生かそうとする」と言うときの「学び」は,教科等の学習に代表される学校での「学び」ととらえられる。そして,その後に続く「学びに向かう力」とは,学校での学びを生かし,どのように社会と関わり,よりよい人生を送るかという生き方に直結するより大きな枠組みの中での「学び」だと考えられる。本研究での「学びへ向かう力」の「学び」とは,この大きな枠組みにつながる「学び」であり,三つの柱として挙げられている「学びに向かう力」の土台となる教科等における「学び」である。そして,土台の「学びへ向かう力」を大きな枠組みの「学びに向かう」へとつなげていくものが授業であり,「主体的・対話的で深い学び」である。 図1-2は,本研究における「学びへ向かう力」 と新学習指導要領で言われる三つの柱との関係を表したものである。 ・①言葉が持つ曖昧性や、表現による受け取り方の違いを認識した上で,言葉が持つ力を信頼し、言葉によって困難を克服し,言葉を通して社会や文化を創造しようとする態度 ・①言葉を通じて,自分のものの見方や考え方を広げ深めようとするとともに,②考えを伝え合うことで,集団としての考えを発展・深化させようとする態度 ・①様々な事象に触れたり体験したりして感じたことを言葉にすることで自覚するとともに,②それらの言葉を互いに交流させることを通して,心を豊かにしようとする態度 ・②言葉を通じて積極的に人や社会と関わり,自己を表現し,他者の心と共感するなど互いの存在についての理 中学校 国語教育 2 図で示したように,まず生徒自身の学ぼうという気持ちがあってこそ,授業で一人一人の生徒にとっての学びが生まれ,三つの資質・能力の育成にもつながる。この最初の段階での学ぼうとする意欲が,「学びへ向かう力」の一つ目の意味である。さらに,その意欲は最初だけではなく,授業を通して継続したものでなければ資質・能力を養うことにはつながらない。「学びに向かう力・人間性等の涵養」とあるように,このような力は,自然としみこむように少しずつ時間をかけてこそ養うことができる。本研究での「学びへ向かう力」の二つ目の意味は,生徒が授業通じて学びへ向かい続ける力ということである。 生徒の学ぼうという気持ちをどのように生み出し,支えていくのかということは,授業を行う上での大前提でもあり,当然のことでもある。しかし,学校現場では,指導者が生徒たちを十分に授業に向き合わせられていなかったり,生徒たちの中にもしっかりと授業に向き合えず力を発揮できていなかったりする状況も見られる。「はじめに」で述べたように,筆者自身もそのような生徒たちと向き合ってきた。まず「やってみよう」と思えること,そしてその思いを継続させ,次へとつなげていけること。生徒たちが,授業を通して言葉と向き合えることを目指し,「学びへ向かう力」を研究テーマとしている。 (2)国語科における「学びへ向かう力」 前項で本研究での学びについて述べたが,では,国語を学ぼうとするというのは,具体的にどのような姿だろうか。答申別添資料には,国語科において育成を目指す三つの資質・能力が整理されており,「学びに向かう力・人間性等」として次のように示されている(6)。

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