001総教C030705H29最終稿(河合)
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・もう二度としないために。 この生徒は『大人になれなかった弟たちに…』 では交流欄しか書けておらず,誰の疑問なのかも 分からない。交流を通して感じたことも続けて記 述しており,メモとの関連も薄い。 ※一番下の気づき,考えたことの欄は空白。 『少年の日の思い出』 〈交流欄〉 ○くん1ちょうをつぶした→自分が傷つきたくないから。 2ーミールのちょうをつぶした →ちょうだけに申し訳ないと思っている。 △さん:傷つきたくないからちょうをつぶした。 □くん:エーミールに軽蔑されちょうをつぶしたのに, 逆に怒った。 〈気づき・考えたこと〉 ・つぐなえる罪ではない。一度やってしまったことは戻 らない。 中学校 国語教育 28 さらに,その交流を経て自分で考えたことについて下の欄にまとめて記述している。より効果的に書き留めることができるようになったと言える。どこに何を書くのか意識させ,学習活動を継続することで,自然とこつをつかんだり,力を付けていったりすることができるのではないかと考えている。また,ノートの使い方を考えることで,教師も対話をどのように組み込み,どのような学習活動をさせるのかなど自然と考えを練りながら授業を作っていくことになるのではないかと考えている。 二つ目の課題は,メモしていたり,そのときの考えを書き留めたりしたことを,最後の考えに生かせない生徒がいたということである。自分が疑問に思っていたことに対する解決策をメモしたり,大切なことに気付いていたりするにも関わらず,その書き留めたことが最終的な考えでは全く触れられていないという生徒も見受けられた。メモしたことやそのときの気付きを生徒自身がつなげていけるような支援が必要であると感じている。しかし,この生徒にはこのような部分に課題があると見取れたのは,実践の中で生徒が書き残していたからこそである。 次頁右表4-1は,ノートを基にどのようなことが見取れるかという例を示している。今回の実践における生徒の記述を参考にしている。 表に示したものは,あくまで一例ではあるがノートに書き残していくことで一人一人の学びを適切に見取っていくことができるのではないだろうか。そして,個々に応じた学びの見取りができれば一人一人に対する指導,また学級全体に対する指導にも生かすことができ,授業改善にもつながっていくと考えている。 (2)評価について 今回,実践をしていく中で,授業を通して生徒たちが身に付けた力をどのように見取るのかということは,大変重要なことだとあらためて感じた。そこで,「主体的・対話的で深い学び」を通して生徒が身に付けた力を,どのように評価できるのか考えてみたい。なお,答申において,評価は「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「主体的に学習に取り組む態度」の三観点に整理されることが明記されているが(23),国語科において,そのまま三観点で評価するか否かは明言されていないため,このような見取りができるのではないかという程度に留めたい。また,ここでは本研究と特第2節 課題と今後に向けて (1)書くという表出方法について 前節では成果について述べたが,課題も見つかった。大きく二つの課題が挙げられる。 一つ目は,過程を書き残せなかった生徒がいたということである。最初と最後の表出では,ほぼ全ての生徒が書き出すことができた。しかし,その過程,特に他者との対話の場面において書き留めることができない生徒が見られた。要点をおさえたメモができない生徒,話し合いをしながら自分で考えたことを書き残せないなど,原因は生徒によって異なるが,効果的に過程を書き残すことに難しさを感じる生徒は多い。このような課題を解決する糸口は,継続的に指導していくことにあるのではないかと考えている。 実践から約4カ月後,A校協力員の研究授業を参観する機会があった。実践後もノートを見開きで用い,継続的に指導をしていただいた。以下に,最初の実践『大人になれなかった弟たちに…』と研究授業『少年の日の思い出』における生徒のノートの変化を紹介する。 『大人になれなかった弟たちに…』 〈交流欄〉 疑問:白い乾いた一本道 感想:悲しいと思った。弟が栄養失調でなくなったから。 しかし,『少年の日の思い出』では,メモ欄に誰の考えなのか記述した上で,複数の意見を述べた場合は「1・2」と番号を振り,矢印も用いて分かりやすく要点をまとめている。

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