001総教C030705H29最終稿(河合)
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②力を伸ばすためにとの距離が近づいていく様子が見られた。振返りには以下のように書いていた。 振返りからも,今の自分と授業の最初の自分を比較し,学習を通して,自分の考えが深まり,成長したことを自覚していることも読み取れ,学びの自覚が得られたのではないかと考えている。 第4節 教師による支援・評価 4つの実践のうち,3つの実践の学習後にチャレンジ問題を実施し,コメントをつけて返却した。三つの問題全て,教科書とは異なる文章を使用した。また,授業の過程を思い出しながら取り組め,身に付けた力を生かせるような問題となるよう意識した。例として,『走れメロス』の学習後に行ったチャレンジ問題を挙げる。 チャレンジ問題として『杜子春』を使用した。太宰治と同時期の文学でありつつ,児童文学の要素を含む作品を選んだ。また,討論をする中でメロスの「人間らしさ」に気づく生徒が多かったため,「人間」というものを考える資料にしたいという思いもあった。当初,問題の資料として,芥川龍之介の児童文学『蜘蛛の糸』と中国古典文学『玄怪録』の二つを用意し,使う資料を選択できるような問題を作成したが,協力員とも相談の上,ややこしくなるだろうという理由から,授業で行った活動と近い『玄怪録』のみを使用することとした。「なぜ太宰治はこの表現や設定を追加したのか」ということから主題について考えを深めていくことを授業で行った。学んだことを生かして「なぜ⑥振返り(交流) ・自分が○だと思ったら,その意思はゆらがずにつきとおしていて,私まで流されそうになりました。討論では,一つ一つの意見に反論できるぐらいすぐ反論する考え方がすごいと思いました。 ・「人質」と「走れメロス」を比べたとき,大きく違う部分をとりあげられていて,とてもよかったと思います。 ⑥振返り(自分) はじめた時には,とても簡単なことを書いていたりして,今見れば自分でも「何書いてるんやろ」というようなことを書いていたけれど,多分,班交流や討論会で考え方が変わったり,深まったりした結果,今では「走れメロス」について難しいことを書こうと思いました。討論会は今までにやったことのない初の試みだったけど,自分の思いをぶつけられて楽しかったです。(でも,班で言い合うのが一番考えが深まる気がするし,楽しかった) (下線は筆者による) 芥川龍之介は変えたのか」という視点をもって主題について考えられるかということを問う問題である。授業で『走れメロス』を学んだ後,太宰治に関わりのある作家の作品を紹介するという設定とした。最初に『杜子春』の主題を短い言葉で表し,その後比較する資料を生かしながら,自分の考えた主題について詳しく説明する問題とした。図3-7は,実際のチャレンジ問題である。この問題に資料として,『玄怪録』と比較したものを提示した。表3-9は,生徒に返したコメントの例である。 主題については十人十色の解答になるため,必ずしもこのようなコメントが当てはめられるとは限らないが,傾向は表れるため,分類することで教師の負担は軽減できるのではないかと考えた。一人一人の言葉に応じたコメントが必要になって図3-7 B校文学的文章チャレンジ問題 表3-9 B年文学的文章チャレンジ問題コメント例 ①生かせている部分・登場人物の言動や場面の展開から主題について考えられています。 ・もとの話と比較し,共通点に注目して主題について説明できています。 ・もとの話と比較し,異なる点に注目して主題について自分なりにとらえられています。 ・もとの話と比較することで,違う視点から考えられたり,説明がしやすくなったりします。 ・異なる点にも注目することで,『杜子春』の主題についての説明に説得力が増します。 ・特に最後の場面にも注目すると,~さんの考えがより伝わりやすくなります。 中学校 国語教育 26

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