①表出(最初) Aを選択。イースター島がどうしてそうなったのかを話したうえで,自分の意見を伝え「こうなったらイースター島と同じことになる」ということによって,より分かりやすいし,想像がしやすいのでAにしました。 ④表出(最後) Aを選択。(序)→多くの疑問を出していて,読者に問いかけていたので内容に入りやすいと思いました。それに対し,イースターでは,問いかけていないため,入りにくいと思いました。(本)→疑問→答え→推測→疑問…という順に話されており,たくさん疑問を解決していくことで,より内容が深まりやすいと思ったし,読者と筆者が一緒に考えることで,より理解しやすいと思いました。それに対して,イースターでは一つの疑問に対して事実を言っているだけなので,どういうどうきでその事実が出てきたのかが分からず,一緒に考えることもないので,内容が深まりにくいのではないかと思いました。⑤振返り(交流) ・最初よりは,考えも増えていて,分かりやすく書いている。 ・最初より,序論と本論に分け,モアイとイースターの比較もくわしくされていて深まっていると思います。 ・最初より,内容がくわしくわかって「~だから~」みたいに,具体的に書いてあって,考えが深まっていると思う。 ⑤自分での振返り 項目1.自分がそう思った理由を前よりもはっきりと説明できるようになった! 項目2.新しい考えや使っている言葉が増えた! 項目3.ポイントを絞って読むことで,気づいていなかったことに気づいた! 項目4.疑問を持てるようになり,そこから考えを広げられた! (四つの項目のうち,1・2・4にチェックを入れてい た。その他として以下のようにコメントを書いている。) 最初は,だいたいこっちの方がいいかなみたいな感じだ ったけど,どんどん考えていくうちに,序→本→結と順 に見ていけるようになり,その中でも一番言いたいこと が言えるようになりました。 (下線は筆者による) また,専門家会議の段階では,よさはあるもののやはり『モアイは語る』の方がいいのではないかと漠然と感じているが,学習班での交流後には,疑問が多いことでその答えやそこから生まれる推測も多く,より深まりを感じるという明確な理由が説明できるようになっている。では,この生徒が最初と最後にどのようなことを書き出し,振返りをしたのか見ていきたい。 必要である派の主張 「走っていない部分のところとして,睡眠をとっているところや結婚式の話などが挙げられますが,睡眠をとらずに走り続けるのは普通の人間なら苦でしかないです。それに結婚式をすることによって,いかにメロスにとって妹が大切な存在か,また友人でもある人質以外にも待っているということを印象づけるために必要とされる部分です」 必要ではない派の主張 「もしメロスが早歩きなどをしていれば全身なえることもなかったし,メロスが寝ていなかったら走らなくても間に合っていたと思うので,寝るシーンは2回も必要な 中学校 国語教育 23 選んだ選択肢が最初と最後で変化した生徒が約29%,変化しなかったが約71%だった。興味深いのは,国語が得意な生徒ほど変化した人数が多く,苦手な生徒は変化した生徒がいなかったということだ。この事実は肯定的な見方と否定的な見方ができると考えている。肯定的な見方は,対話的な活動をすると得意な生徒は変わらず,苦手な生徒は得意な生徒の言う通りに書いてしまうこともあるが,得意不得意に関わらず対話から学びが生まれたという見方である。否定的な見方は,得意な生徒は積極的に対話をするため考えも深まり,新たな考えを取り入れるのも上手いが,苦手な生徒は消極的なため対話による学びが生まれないという見方である。しかし,理由がほとんど書けていなかった苦手な生徒が,具体的に書けるようになっているという事実と合わせて考えると後者の見方より前者の見方の方が妥当であると考えている。また,例に挙げている生徒も最初と最後のどちらもAを選択しているが,振返りに「一番言いたいことが言えるようになった」と書いている。新たな考えが増えただけでなく,それまで曖昧にしかなかった考えが対話を通して考えていくうちに明確になり,外言化できたということが言える。さらに,「~できるようになった」と振り返っている生徒が多いことからも,学びの自覚へとつながったのではないかと考えている。 ◆文学的文章の授業実践 実際に生徒が行った討論の例を挙げたい。このグループのテーマは「走らない場面は必要か」である。このクラスは,すでに「メロスは狂っているか」(狂っているという表現は,登場人物の台詞として使用されている)「『走れメロス』という題名はふさわしいか」というテーマで二つの討論を終えている。討論であるため,生徒の言葉が非常に長く,省略している部分も多い。
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