果,最初の表出と最後の表出とが異なるページに書かれており変化を見取りくい様子が見られたためである。 図3-1の部分の記述 ①最初の表出 納得できた。サルの落とした食べ物をひろってシカが食べることを「落ち穂拾い」と呼んでいて,それをするわけは,春はシカ本来の食物が不足しているということと,サルが落とす食物の方が栄養価が高いから。 ④最後の表出 納得できない。(だいたい納得できるけど) ・図1は9月上旬だけど図3は9月下旬 ・4月は落ち穂拾いが多いけど,体重は軽くはない。 ・観察時間がバラバラだと正確にできない。 ・秋に落ち穂拾いが少ないのはなぜ。 ・サルのデータがあれば,より納得できる。 ④振返りの交流で他の人からのコメント ・観察時間がバラバラだと,例えばどういうときに,どういうことが正確にできないのか書くといいと思います。 ・私はぜんぜん納得できなかったのですが,最初から分かったことがとても多いのは良いと思います。今になって疑問が多くなったのはなぜ?でも,初めは分かっていなかったということを今になって分かったということかもしれませんよね。 ④自分の振返り ・今回みんなが同じ意見なのでは?と思っていたけど,中には違う人もいて,こんな考え方なんだと思いました。Sさんは私とは見方が違って,とても参考になりました。 図3-2の部分の記述 ②-1 自分で考える/ペアに相談する ・秋まで体重を蓄えるはずなのに,どんどん減っている。 (秋に) ・図1では9月に少し出会っているのに,図3では体重が 下がっている。 ・秋は落ち穂拾いで食べることのできるものがたくさんあるのに体重が下がっている。 (落ち穂拾いをしていない) ②-2(学習班) ・4月がいっぱい食べているのに,体重は5月に増えている。(3月に比べて) ・図1はあがっているけど,図3は下がっている。 ○必要なデータ…草の摂取量/それぞれの種類の量 ②-2(全体) 図1と図2を比べて ・観察時間がバラバラ→合わせる ・3月5月 落ち穂拾い(多) イネは4月~10月の夏~秋が少ないが,秋に落ち穂拾最初の感想では,納得できたと書いている生徒 もいれば,納得できなかったと書いている生徒もいた。しかし,共通しているのは最後の感想では,疑問が増えたと書いている生徒が多かったことだ。そのことを,振返りの交流コメントで「今になって疑問が多くなったのは,分からなかったことが分かるようになったからかもしれない」と書いている生徒がいるように,見えていなかったことが見えるようになったということが言える。そのことを指摘してもらった生徒にとっても,学びの自覚を得ることにつながったと考えている。 また,全体交流のメモに「サルのデータ」が必要であるとメモしており,最後の表出では,「サルのデータ」があれば筆者の考えの説得力が増す可能性について触れている。学習班だけの話し合いで終わらず,全体での話し合いを共有することが大切であり,その際生徒が思考をつなげていけるように教師がどのような助言やまとめをするかが重要であると分かる。 ◆文学的文章の授業実践 専門家会議での対話が最も活発であったため,その話し合いの様子を例として取り上げる。基本的に3~4人班での活動をさせたいと考えているが,欠席等の問題もあり,女子生徒LMN,男子生徒OPの5人で話をしている。このグループは風景担当班で,「白い乾いた一本道」という表現にこだわっていた。 「書いてあるということは意味がある」と言っているように,作者がこう表現したのはなぜだろうと考えようとしている姿勢が伝わってくる。そう考えることが,細かい表現にこだわり,教科書やノートを何度も見返すことにつながっている。 また,生徒Pの発言に注目してもらいたい。風景のことを議論している中でも,僕が盗み飲みしてしまったことが気にかかっていることが分かる。そして,空が高く澄んでいたという表現と僕の心に潜み続けていた罪悪感をつなげている。しかし,いが少ないのはなぜ?→サルの行動データ 図1と図3を比べて ・シカだけでは分かりにくい→サルの行動データ ・4月は落ち穂拾い(多)体重(軽)→4月のデータ ③気付いたこと・考えたこと ・もともとはおかしいと思っていなくても,よく見てみ たり他の人の考えを聞いたりすると,たくさんおかしい なと思うことがあっておどろきました。 ・全体交流では細かいところまで見た意見が出ていて参 考になりました。 (下線は筆者による) 中学校 国語教育 19
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