が当てはまる。いずれもペア,学習班,全体との交流という対話を挟んでの振返りになる。対話を通して,気付いたこと,参考になった考えをメモし,メモを基に振り返る。図3-2はノートの使い方として説明した上から下に思考が流れていくことを意識したものである。図3-1は,最初と最後の考えを比較しやすいように,最初の考えと学習後の考えを隣合せにしている。そうすることで,自分での振返りもしやすく,また他の生徒もコメントを書きやすくなると考えた。これは,後述している『大人になれなかった弟たちに…』の実践において,1時間目から順番にノートを使っていった結 Dの最初の説明がたどたどしかったため,もう一回説明し直す場面。「もう一回言うで」と,今度は落ち着いて,ゆっくりと言葉を切りながら説明を始めた。 D「図1と図3を比べて,図1では,4月に落ち穂拾いに出会う回数の方が多いけど,図3では3月が一番栄養が少ないのに,なぜ図1のように,4月の方が落ち穂拾いに出会う回数が多いのか疑問に思いました。」 (F 教科書を見ながら,納得している様子) E 「どういうこと?どういうこと?(Dのノート)かして。」 D「待て。おれが言うから。」 E「だから,ノート見せて。」 D「待って。説明するから。(教科書をEの方に向けて図1を指し)図1見てな。図1見た?」 E「見てるやん。」 D「図1では,4月の方が出会う割合が多いねん。」 E「うん。」 D「そやのに,図3では3月の方が体重が少ないやん。図3 見てる?」 E「見てるよ。」 D「だから,そのときに栄養がほしいやん。そやのに, こっちでは変化が少ないやん。だから…(略)」 E「何言うてるか分からへん。」 F「あんな,3月落ち穂拾いの回数少ないやん。図3見ると3月が体重少ないから栄養とらなあかん時期やのに,4月の方が(落ち穂拾いの回が)多くて,3月の方が少ないのはなんでかなって。」 D「そう!」 E「え?ちゃうやん。図3…?」 F「3月は,それこそ落ち穂拾いせなあかん。」 E「うん。」 F「けど,3月少なくて4月体重けっこうあるのに,落ち穂拾いいっぱいしてんねん。」 (E 考え込む。 F 言いながら考える。) F「逆か!落ち穂拾いしてるから体重が多いのかも!」 E「でも表2見たら(サルの食物の方が栄養)比較的多いやん。」 D「図見て。」 E「いや,表も見なあかんやろ。」 F「落ち穂拾いの回数少ないから,体重少ないのかも。」 この対話ではDとEだけでなく,生徒Dの主張を「なるほど」と思い生徒Eに説明していた生徒Fが,「4月は落ち穂拾いをしているから,体重が増えているのかも!」(3月はしないのではなくて,できないのかも)と新たな気付きを得ていることも読み取れる。授業の最初に,筆者が間違っているというのではなくて,もっとこういうデータがあったらいいというアドバイスを考えるように伝えていたため,生徒Dと同じ疑問をもった別の学習班では「3月は,時期的にサルの食物も少ないのではないか」と考え,サルのデータがあれば仮説2の説得力も増すと結論付けていた。生徒Dのグループでは結論までいたらなかったが,全体での発表時間を設けることで,例に挙げたグループにとっても一つの気付きが得られるということになった。 では,授業を通して生徒がノートにどのような記述をしているのか例を挙げる。図3-1・3-2は,実践でのノートの使い方を表したものである。 図3-1 A校での実践におけるノート・課題Aと振返り 図3-2 A校での実践におけるノート・課題aの過程 課題aに対する学習の過程として,②-1・2と③ ⑤自分の 振返り 中学校 国語教育 18 ⑤振返り 交流
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