る」など主張とは直接結びつかない指摘ばかりする生徒も予想されるため,複数のデータを合わせて考えたり,主張とのつながりを意識させたりすることが重要である。 ◆A校・文学的文章1年 表現から心情を読み取るための視点として以下の4点を提示した。 1.登場人物の言葉(発言) 2.登場人物の行動 3.登場人物の表情 4.各場面で描かれている風景 この4点がシグソー学習で担当ごとに分析する視点でもある。焦点を絞ることで注目すべき表現も焦点化され,心情について考えやすくなるのではないかと考えた。自分の担当について考える際には,「担当箇所に関わると思う部分に線を引く」「線を引いた中で特にここは大切だと思うところを抜き出す」「抜き出したところからどのような心情が読み取れるか」「そのように読み取れるのはなぜか」など考える手順を示した。専門家会議では,注目した表現が同じなのか,異なるのか,同じ表現から読み取っていることは同じなのか,異なるのかなどを確認し,学習班に戻ったときに話す内容を整理することも意識させた。 また,最初の表出で疑問を含めた感想を書いたことを生かした。例えば「なぜ僕は弟のミルクを盗み飲みしてしまったのだろうか」という疑問は,僕の行動という視点に立っている疑問であり,その答えが心情につながる等,疑問が課題解決の糸口になることを意識させた。 ◆B校・説明的文章2年 課題Aを解決するための視点として以下の4点を提示した。 1.題名の効果 2.話題提示の仕方・まとめ方 3.表現や説明の仕方 4.本論の展開の仕方 この4点がシグソー学習で担当ごとに分析する視点となり,目標の様々な角度から読むことにもつながる。さらに,課題aの解決に向けて,一人一人が考えていけるよう次のような視点を提示した。 1.それぞれの題名の特徴について考えてみる。 2.どのような話が最初にされており,まとめとどのようにつながっているか考えてみる。具体的な例や話,比較などがされていないかにも注目する。 3.文末表現や書出しに注目して考えてみる。また,序論・本論・結論がどのようにつながっているか,全体の展開について考えてみる。 4.本論がさらにいくつに分かれるか考えてみる。分けた後に,どこに問いや答えがあり,筆者の 中学校 国語教育 17 考えがあるのか整理してみる。 このようにいくつかの視点をもって考えること で,説明的な文章の読み方が身に付くと考えた。また,二つの文章の特徴が浮かび上がり,どのような工夫がされているかが分かるとともに,その工夫が説得力のある文章の秘訣だと生徒自ら気付けるのではないかと考えた。 ◆B校・文学的文章2年 作品の主題につながる討論とするために,どの ような謎を見つけ,提示するかということが大きな鍵となる。課題a-1・2は,主題から逸れないようにするための活動であったが,個人で謎について考える際も,そのことに触れ意識させた。また,今回は討論を行うため,謎について考え,吟味する上で以下のようなポイントを示した。 ・「~である・~でない」「~べきである・~べきではない」など答えが二つに分かれるような謎。 ・どちらの答えもあり得ること。 ・どちらの主張をしても,様々な根拠が挙げられること。 このようなポイントを示すことで,多様な読みもでき,一人一人の読みも深まっていくのではないかと考えた。また,さまざまな根拠をあげることでテキストを繰り返し読むことにもつながると考えた。 第3節 生徒の様子―対話と振返りから― 事後アンケートでは,自分の考えが広がった,深まったと回答した数が非常に多く,その理由として各授業の対話が有効だったと答えた生徒が圧倒的に多かった。このことから,対話が生徒たちの学びの深まりにつながったと考えている。各授業での実際の対話の様子を一部紹介し,どのような振返りにつながったか見ていく。 (1)A校・1年生の様子 ◆説明的文章の授業実践 【課題a-2】の対話において,国語の学習に苦手意識をもつDが,自分の考えを同じ学習班EFに説明している場面である。 生徒Dは,図1と図3を比べて仮説2のこと(サルの落とす食物のほうが,栄養価が高い)から落ち穂拾いをするのであれば,体重が少ない3月こそ落ち穂拾いが多いはずだと主張している。一方で,生徒Eは表2で栄養価が高いことは証明されており,筆者の考えと表2のデータは一致していると反論している。
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