001総教C030705H29最終稿(河合)
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図表の見方や役割を理解し,事実と筆者の考え のつながりを捉える。 前の自分と今の自分が,どのような学びの過程でどのように変化したのかということを意識した授業を実践した。ここで言う「書く」とは,自分の考えたことを整った文章でなくてもよいから,とにかく書き出すということである。 また,四つの実践全てにおいて,他者との対話を多く取り入れているが,国語科の授業は対話なしには成り立たないと言っても過言ではない。自分で考える→他者と交流する→自分で考えるという学習の流れは目新しいものではなく,おそらく,現在多くの指導者が行っている。国語科の授業としてシンプルな授業計画であるが,だからこそ,あらためて一つ一つの学習の過程をどのように残し,認識していくのかということについて考えていきたい。 今回,説明的文章として『シカの「落ち穂拾い」―フィールドノートの記録から―』(1年生),『モアイは語る―地球の未来―』(2年生)を,文学的文章として『大人になれなかった弟たちに…』(1年生),『走れメロス』(2年生)の実践を行った。1年生の実践を行った学校をA校,2年生の実践を行った学校をB校とする。なお,A校は全てノートでの実践,B校は最初と最後の考えを書く部分と最後の振返りの部分はワークシート,その他をノートで実践している。 第1節 各実践における目標と授業の流れ (1)『シカの「落ち穂拾い」―フィールドノートの記録から―』(説明的文章1年・A校) 目標を設定するにあたって,新学習指導要領の 内容と教科書の目標を参考とした。 右表3-1は,本実践の目標と特に関わりがある新学習指導要領に示されている内容と教科書に示されている目標をまとめたものである。 本教材は,説明的文章の中でも記録文であり,筆者の考えの根拠となる事実として多くの図表が提示されている。そのため,図表に示された事実が考えの根拠として妥当であるのか考えることで,図表の役割や説明文の読み方,説得力のある文章に必要な要素などを理解することができると考え,以下のような目標を設定した。 教科書の学習の窓に書かれているように,提示されているデータが筆者の考えの根拠として妥当なのか批判的に読むことで,目標を達成できると考えた。 表3-2は,その考えを基に作成した授業の流れである。 表3-2 『シカの「落ち穂拾い」』授業の流れ ・示されている事実と,筆者の考えとの関係を読み取る。 →(学習の窓) 事実として述べられていることや図表などが、どのような考えの根拠となっているか、また、それが説得力をもっているかどうかを考えながら読んでいくことが大切である。 ・筆者の考えの述べ方や、図表の役割について自分の考えをもつ。 (下線は筆者による) 授業の流れ 教科書 対話 ①テキスト ②-1 テキスト 他者 ②-2 他者 テキスト 自己 ③他者 自己 ④自己 テキスト ⑤自己 他者 第3章 「学びへ向かう力」を育てる授業・ 評価の実践 表3-1 新学習指導要領と教科書に示されている内容 新学習指導要領 C 読むこと ア 文章の中心的な部分と付加的な部分,事実と意見との関係などについて叙述を基に捉え,要旨を把握すること。 (2年生) ウ 文章と図表などを結び付け,その関係を踏まえて内容を解釈すること。 ①通読し,納得できるか納得できないか書く。【課題A】 ↓ ②本文に書いてあることや筆者の考え (仮説)と図表を見比べて,考えとその根拠となっている事実(図表)のつながりが妥当かどうか考える。 ②-1【課題a-1】 学習班の中で,仮説1担当班と仮説2担当班に分かれて考える。 ②-2【課題a-2】 各担当で考えたことを学習班で共有し,さらにどのようなデータがあればよいか考え,まとめる。 ↓ ③学習班ごとに発表をし,新たな気づ きはメモする。学習班の発表をもとに,教師が筆者の考えとのつながり,図表の役割について確認する。 ↓ ④もう一度納得できるか納得できないか書く。【課題A】 ⑤学習を振返りながら,感想を書く。 お互いにノートを見て,コメントを書き込む。 ↓ ⑥チャレンジ問題を解く。 「読むこと」の学習においては,テキスト,他者,自己という三つの対話が生徒たちの学びを深めていく上で重要な役割を果たすと述べた。その 中学校 国語教育 11

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