001総教C030705H29最終稿(河合)
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のを意識することが重要だと考える。どのようなワークシートを用いたかについては,B校における授業実践の項で後述したい。 (2)課題設定と課題解決に導く視点 本研究において,対話の果たす役割は大きいが, 話せば何でもいいというものではない。指導者側の明確な意図や仕掛けがなければ,学びのための対話は成り立たない。本章第1節4項で,教師の支援として課題設定の在り方を挙げたが, どのような課題を与えるかということが重要であると考えている。青山は,国語科における対話的な学びが成立する要素のうち,授業の手立てとして以下の6項目を挙げている(22)。 ④⑤⑥は,書くという表出方法と直接的につながることであると考えられる。そして,①②③が対話をするにあたって指導者が特に留意しなければならない事項である。特に①③はどのような課題を与えるかということであり,授業の中で生徒たちが自ら学ぶことを実現するためには不可欠な部分である。目の前にいる生徒たちにとって,難しすぎず,簡単すぎない課題でなければ,「解決したい」とはならないだろう。この生徒たちにとっても難しすぎず,簡単すぎない課題はその集団によって異なり,目の前にいる生徒たちにとって適切な課題を設定できるかということが重要である。また,生徒が考えてみたいと思える課題は,国語科の場合,答えが一つと定まっていないことが望ましいと考えている。一人一人が自分なりの答えを出せること,その答えにたどり着くまでに様々な角度から考えられ,自問自答を繰り返し,道筋を見つけていけることが大切である。答えは一つに定まってはいないが,何でもいいのではなく,根拠も妥当性もある自分にとっての結論が導き出せるような課題であれば,一人一人の学びも深まっていくだろう。そのような課題を,実践では課題Aとして取り入れていきたい。 また,「焦点化した課題」を設定するためには,指導者に明確な目的がなければならない。そして,その目的を生徒自身にもしっかりと認識させなければ,有意義な対話にはならないだろう。目標と①学習者にとって解決したい課題であること。 ②自分の考えや立場を明確にさせること。 ③焦点化した課題(発問)であること。 ④意見の分類・整理により観点が明確にされること。 ⑤思考の視覚化が図られること。 ⑥子どもの言葉で言い換えさせること。 中学校 国語教育 10 (16) 前掲(15) p130 (17) 前掲(15) p130 (18) 前掲(15) p61 (19) 梶田叡一・加藤明『改訂 実践教育評価事典』文溪堂 2010.8 P134-135 (20) 西岡加名恵・石井英真・田中耕治『新しい教育評価入門- 人を育てる評価のために-』有斐閣 2015.4 p69 (21) 前掲(19) p235 (22) 前掲(14) p27 対話のつながり,学習活動と育成すべき力のつながり等一つ一つのつながりを指導者が意識することが重要であると考えている。このつながりは,先に述べた自分とテキスト,他者,過去の自分をつなげていくという「読むこと」における三つの対話を繰り返す中でも意識されることである。実践校での授業において,生徒たちにとって難しすぎず,簡単すぎない課題をどのように設定し,課題解決への視点をどのように与えたのか,また三つの対話をどのように取り入れたのかということについても第3章で述べたい。 (3)チャレンジ問題 本研究における教師の評価は,縦断的個人内評価としている。実践では特に,単元(教材)の学習終了後にどのような力が付いたかより自覚できるようチャレンジ問題を設定し,コメントをつけて返す。コメントの内容として以下の2点を書くこととする。 ①学習したことが生かせているところ。 ②さらに力を伸ばしていくために必要なこと。 特に①を書いて生徒に返すことで,学びの自覚 につながるのではないかと考えている。また,問 題文として教科書で学習した教材以外の文章を用 いることで,教材を学んだのではなく,その教材 の学習を通して身に付けた力がどのようなものなのか生徒も自覚できるのではないかと考えた。異なる文章を用いて問題を作る作業は,教師にとっても授業を通じてどのような力を身に付けさせたいのかということがより明確になるという効果もあると考える。さらに,異なる文章ではあるが,授業で学習してきた過程を思い出しながら解くような問題にすることで,もう一度学んだことを振り返ることになり,授業とのつながりが生徒にも分かるように意識した。 (15) 文部科学省「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)中教審第197号」2016.12.21http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2017/01/10/1380902_0.pdf 2018.3.2 p131

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