001総教C030705H29最終稿(河合)
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交流 板書 メモ 最初の考え 全体 ※単元の一番最初のページには 最初の表出の横に最後の表出。 気づき ペア 考えた 学習班 こと れゆえ,到達度合いのみを示す情報のフィードバックは,学習改善に結びつかないのである。(下線は筆者による) 図2-2 ノートの使い方 流をし,どのように自分の考えが変化したのかと いうことを流れに沿って生徒自身が見取ることができる。そこから,形ばかりでない,学びの実感を伴った振返りができ,何を学んだか自覚できるのではないかと考えた。また,生徒がそのとき,そのときに考えたことが可視化されるので,指導者も一人一人の学びの過程が見取りやすく,支援 このように見開きで使うことで,最初にどのようなことを考え,どのような交 中学校 国語教育 9 もしやすくなる。さらに,指導者がノートを活用しようと思えば,自然と適切な課題,対話等についても考えることになる。交流の欄は,特に参考になったところや自分の考えに影響を与えた意見は色を変えたり,囲ったりと分かりやすくまとめるなどの工夫も考えられ,分類や整理の仕方を身に付けていくことにつながる。このようなノートの活用は,学習の過程で生み出される具体的な学習物の価値を生徒自身,仲間,保護者,教師とともに認め合うポートフォリオ評価法の考え方とも重なる。『実践教育評価事典』には,ポートフォリオ評法には注意すべき点があるとして,以下のように述べられている(21)。 (前略)ポートフォリオを作成すること自体が自己目的 化しないように留意することが肝要である。換言すれば, 学習物の収集によって蓄積されたポートフォリオ自体は, 何も語ってくれないということである。すなわち,学習 過程や終了時に収集した多様な学習物を子ども自身の手 によって再構成される活動によって初めて,ポートフォ リオがその子どもにとって「意味」「ねうち」をもつ存 在となって意識化できるのである。 例としてノートの使い方を挙げたが,ワークシートでも同じようなことが可能であると考えている。実践でも,1校はノートのみで行い,もう1校ワークシートを併用している。また,ノートを見開きで使うと,空欄が目立つように感じられるかもしれないが,毎時間ごとに見開きを使うというのではなく,2時間で使うこともあれば,別のワークシートを用いることも可能である。ワークシートを用いる場合も,学習の過程が分かるようなも(下線は筆者による) ノートを作成する過程で,必要以上に丁寧に書いたり,色ペンなどを使って凝ったりする生徒がいるが,それはまさにノートを作ること自体が目的になってしまっている。そうではなく,自分がどのように考え,何に気付き,何が参考になった のか,そこからどのように考えが深まったのか,後から見返したときに分かることが重要である。また,前の課題について書いていたことが,今取り組んでいる課題を解決する際に役立つようなものになることも大切だと考える。このような活動は,本研究の生徒の振返りでもあり,再構成するという活動でもある。生徒にとって「意味」「ねうち」のあるノート・ワークシートにするためにも,振返りが不可欠であり,意味ある振返りとなることを目指して,ノートやワークシートを有効に使っていきたい。 教師の評価を生徒にフィードバックしていく場合,点数をつけずにコメントのみにした方が有効だということである。ここで言われているフィードバックは,縦断的個人内評価を生徒に返すという本研究での教師の評価と重なるものである。毎時間コメントを返すというのは現実的に難しい部分も出てくるかと思うが,単元の学習後にこのような返し方をすることは可能であり,効果的であると考えている。したがって,実践では単元の学習終了後に,教師による縦断的個人内評価をコメントとして生徒に返すということを取り入れている。また,このような個人内評価は,生徒自身による改善にもつながるものであり,支援でもあると考えている。 第2節 実践をすすめる上でのポイント (1)ノート・ワークシートの活用 書くという表出を中心とした授業を実践してい くことになるが,何をどのように書き出していくのかということについて述べておきたい。 国語の授業ではノートを使う際,板書に加え,自分の考えや他者の考えを書き込むことが多い。 そこで,整理してまとめる意識をより明確にす るため,ノートを見開きで使用し,上のページは 板書や最初に自分で考えたこと,下のページの上段に交流した内容,下段にさらにそこから自分で考えたことを書くという使い方を考えた。左図2-2は,見開きでのノートの使い方を表したものである。

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