001総教CR030517R1研究論文(田中)
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である。学年初めのキャリア・パスポートを参照しながら,「理想の中学生のイメージにどれくらい近づくことができたか」および「中学2年生になって新たに成長・発見したこと」を記入する。この「新たに成長・発見したこと」が,学年末の研究版CPにおいて最も注目する項目である。自己に対する新たな気づきを書き記すことができれば,以前と比べて成長を感じつつ,自己理解をさらに深めることができると考えられるからである。 加えて,「他者(友達・家族・地域の方など)から新たに学んだこと」の項目も設定した。自己理解は自分との対話だけでなく,他者から見た自分についてコメントをもらったり,他者について知る中で自分に対する理解も深まったりといった効果が生まれると考えられる。福島(2015)は,「自己理解とは,自分を知り理解すること,自分自身に関する理解のことです。そして,自分を知り,理解するための手がかりには,身近な人から直接あるいは間接的に指摘された経験や身近な人の行動によって自分を省みる経験などが含まれます」(19)と述べている。他者から得られる自己理解を大切にすることで,振り返りの内容が自己満足とな学 想 理 年始め印象に残った(影響を受けた)出来事や場面(1学期のことでもOK) その出来事・場面を選んだ理由(どのようなところに自分の成長を感じたか) ≪学年初め≫に書いた“理想の中学生”のイメージにどれくらい近づくことができましたか? (あてはまるところに○をつけよう) 他者(友達・家族・地域の方など)から新たに学んだこと ○将来の自分(30歳の私)を想像しよう (生き方探究・チャレンジ体験) 周りの大人から 3年生になる自分へ『ひとこと抱負』 →→ 中学2年生になって新たに成長・発見したこと そのために身につけたいと思う力 今,頑張りたい・チャレンジしたいこと 名前 : 126 次に,「働くことに対する今のイメージ」の項目を設定している。中学2年生で職場体験が行われる学校が多いことを踏まえ,体験活動前に働くことに対するイメージを書き残しておくことが大切であると考えた。そして,ここでの記述を学年末のキャリア・パスポートにつなげることで,生徒自身が意識の変容に気づくことができるであろう。 そして,本研究で最も注目するのが「私の自己PR」の項目である。自己理解の中でも,自己に対する肯定的な理解(自分のよい点,好き・得意なもの・こと,頑張っていることなど)を深めることにより,学びへの意欲や自信へとつながっていくと考えられる。本研究では,この自己PR欄を少しでも自信をもって記述できるような生徒の姿を理想としている。書くことを強制しては逆効果であるが,一人一人の生徒が前向きに書き進められるよう,取組を蓄積しておくことが大切と考える。 「こんな大人になりたい!(将来の夢)」および「そのために,つけたい力」の項目は,遠い将来を見通すことを想定している。なりたい職業を書くことはもちろんであるが,大人の理想像を想像した時の特徴等をまとめてもよい。自己理解に立脚しながら,現時点での将来像を思い描き,記録として蓄積しておくことがねらいである。 中段には,「これからの自分・なりたい自分」の欄を設定し,学習面,生活面,家庭・地域,その他の四つの面について「目標」および「そのために頑張りたい・チャレンジしたいこと」を意思決定する。この項目は国の例示資料を踏襲している。 また,生徒のキャリア発達を促す上で,教師や保護者などの大人との対話的な関わりが重要であるとされている(18)。したがって,「周りの大人から」という項目を設け,その内容を受けて最後に生徒が「ひとこと抱負」を記入するという流れとなるよう作成した。大人からの肯定的な関わりにより,生徒がさらに自信や自己理解を深め,目標達成への意欲を一層高めることがねらいである。 続いて,学年末に実施することを想定した研究版CPを掲載する。内容は右段の図2-2の通りである。 学年末の研究版CPでは,まず「印象に残った(影響を受けた)出来事や場面」および「選んだ理由」の項目を設定した。一年間に経験した出来事を思い出しながら,自身の成長を実感することがねらいである。そのためには,より具体的な場面が記述できるよう,日々の教育活動における振り返りを記録し,蓄積しておくことが大切となる。 その下に位置するのが,自己理解に関わる項目 図2-2 研究版キャリア・パスポート(学年末) 中学校 キャリア教育 6 キャリア・パスポート (中学2年生) ≪学年末≫ 30歳のとき,どんな自分になっていたいか

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