001総教CR030517R1研究論文(田中)
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教育課程全体で行うキャリア教育の中で,特別活動 キャリア・パスポートは仮称であるが,「ここでの『パスポート』とは,公文書である旅券という本来の意味を超えて,学びの履歴を積み重ねて124 表1-1 本研究における「自己理解能力」 知識・技能 ・自己の適性・役割の理解 ・自分を振り返り,良い点を伸ばし,思考力・判断課題を受け止め,克服していくこと力・表現力等 ができる力 ・前向きに考える力 学びに向かう・主体的に行動し,進んで学ぼうとす力・人間性等 る力 が中核的に果たす役割を明確にするため,小学校から高等学校までの特別活動をはじめとしたキャリア教育に関わる活動について,学びのプロセスを記述し振り返ることができるポートフォリオ的な教材(「キャリア・パスポート(仮称)」)を作成することが求められる。 また,これら四つの力は全て包括的な能力概念である。そこで,「在り方答申」の内容を踏まえ,本研究における「自己理解能力」の具体的な内容を,資質・能力の三つの柱に分けて示す形で,以下の表1-1のように整理した。 この「自己理解能力」に重点化しつつ,本研究において目指す生徒像は,「将来を前向きに考え,学ぶ意欲をもって取り組む生徒」とした。思春期の発達段階にあり,多感な時期である中学生が,変化の激しい社会や将来に対し,自己理解を深める中で少しでも前向きに捉え,社会的・職業的自立に向かってほしいとの思いがある。自己理解を適切な目標設定につなげることにより,学校でのさまざまな取組に主体的に臨むことができるきっかけとなるのではないかと考えている。 (3)キャリア・パスポートについて キャリア教育が特別活動を要としていることは先述したが,その際に活用する教材が「キャリア・パスポート」である。中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(平成28年)の中で,キャリア・パスポートについて以下のように明記されている(14)。 (2) 2の(3)(「一人一人のキャリア形成と自己実現」:引用者注)の指導に当たっては,学校,家庭及び地域における学習や生活の見通しを立て,学んだことを振り返りながら,新たな学習や生活への意欲につなげたり,将来の生き方を考えたりする活動を行うこと。その際,生徒が活動を記録し蓄積 する教材等を活用すること。 中学校 キャリア教育 4 いくことにより,過去の履歴を振り返ったり,将来の学びの予定を考え積み重ねたりしていくことを支援する仕組みを指すものである」(15)との説明もある。キャリア教育において,生徒が学ぶことと自己の将来とのつながりを見通すことが大切であることは先述したが,キャリア・パスポートを用いることで過去の学びを振り返り,将来に対しての見通しをもつことにつながると考えられる。 また,新学習指導要領総則においても,特別活動における学級活動の「3 内容の取扱い」の項目として,次のような記述がある(16)。 キャリア教育において要となる,特別活動における学級活動の中で,学習や生活の見通しを立てることや,学んだことを振り返ることが求められていると分かる。そして,その際に活用する「生徒が活動を記録し蓄積する教材等」とは,キャリア・パスポートを指すものと捉えられる。 さらに,中学校学習指導要領解説 特別活動編 では,こうした教材を活用した活動を行う意義として,以下の三点を挙げている(17)。 ① 中学校の教育活動で行うキャリア教育の要としての特別活動の意義が明確になる ② 小学校から中学校,高等学校へと系統的な キャリア教育を進めることに資する ③ 生徒にとっては自己理解を深めるためのも のとなり,教師にとっては生徒理解を深める ためのものとなる ①,②は,これまで述べてきた内容と重なっている。キャリア・パスポートを活用することで,キャリア教育を進める上で大切にすべき意義が明確になることが期待されているといえるだろう。 本研究で特に注目したいのは③である。生徒は振り返りを積み重ねることで,以前と比べて成長

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