001総教CR030517R1研究論文(田中)
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(1) 文部科学省 「中学校学習指導要領(平成29年告示)」 (1)今,求められるキャリア教育 はじめに 中学校では,令和3年度より新学習指導要領が全面実施となるが,その中でキャリア教育の重要性がこれまで以上に強調して示されている。特に特別活動における学級活動の内容として,「(3) 一 人一人のキャリア形成と自己実現」が設定され,キャリア教育が明確に位置づけられた(1)。 京都市では「生き方探究教育」という名称で,キャリア教育に取り組んでいる(2)。名称は違うが,意味内容は同じである。したがって,本稿では国および先行研究が示す内容には「キャリア教育」,京都市の内容を取り上げる部分には「生き方探究教育」の語をそれぞれ用いることとする。 この名称からも分かるように,キャリア教育は子どもの生き方に関わる教育であり,学校生活を通してさまざまなことを経験しながら,自己を見つめ,将来を見通していくことが重要になる。その意味で,各学校においてキャリア教育につながる実践として,多くの取組を挙げることができるであろう。 しかし一方で,こうした特性を持つがゆえに,何がキャリア教育なのか,今までとの違いはどこにあるのか分かりにくい部分があるようにも感じられる。このような漠然とした理解では,キャリア教育の視点を学校教育におけるさまざまな実践に反映させることは難しいのではないだろうか。 キャリア教育は特定の活動や取組に集約されるものではなく,学校教育全体を通して行われる。そうした中で,最も大切なのはキャリア教育の視点を意識して計画・実践を行うことであると考える。生徒は注目すべき視点が与えられていなければ,その視点に関わる部分に気づかず,見過ごしてしまう可能性が考えられるからである。 本研究は,キャリア教育の必要性をまとめるとともに,キャリア教育の充実に向けた具体的実践,特に「キャリア・パスポート」と呼ばれる教材の効果的な活用について検証したものである。 2018.3 p.163 (2) 京都市教育委員会 「京都市生き方探究(キャリア)教育スタンダード」 https://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/cms files/contents/0000217/217994/sutandard.pdf 一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育 この定義により,キャリア教育は一人一人の社会的・職業的自立に向けた教育であり,「必要な基盤となる能力や態度を育てること」が学校教育において求められているものと捉えられる。 では,日本における若者の社会的・職業的自立の現状はどのようなものだろうか。まず,文部科学省・厚生労働省共同の調査(4)によれば,就職希望者のうち,高等学校卒業者の就職率は98.2%,大学卒業者の就職率は97.6%と高水準である。 しかし,厚生労働省の調査(5)によれば,就職後3年以内の離職率は,平成27年度の高等学校卒業者で39.3%,大学卒業者で31.8%に上る。これらの調査から,希望すれば最終的には就職できる者がほとんどである一方で,就職しても3割以上の若者が早期離職しているという現状があるといえる。 そして,内閣府による初職の離職理由に関する調査(6)では,一番多かった項目が「仕事が自分に合わなかったため」(43.4%),次いで「人間関係がよくなかったため」(23.7%)となっている。また,2018年の若年無業者(15~34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者)は53万人で,若年人口の2.1%(約50人に1人)である(7)。 以上のことから,日本における若者の社会的・職業的自立は決して十分でない現状といえよう。 中学校 キャリア教育 1 121 第1節 キャリア教育とは キャリア教育とは,どのようなものだろうか。中央教育審議会は,「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」(平成23年,以下「在り方答申」)の中で,キャリア教育を次のように定義している(3)。 こうした中,新学習指導要領特別活動では,学級活動の内容に「(3) 一人一人のキャリア形成と自己実現」が設定され,小学校からの教育活動全体を通してキャリア教育を推進することが明確化された(8)。小学校段階から,必要な基盤となる能力や態度を育てることが強調されたことになり,学校教育が果たす役割は大きいと捉えられる。 第1章 キャリア教育の必要性

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