001総教CR030517R1研究論文(田中)
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①各教科等でのキャリア教育の実施および検証 本研究では,おもに学校行事でつなぎ,キャリア教育を進める一提案を示したが,キャリア教育は学校教育全体で進めるものである。各教科等においても,振り返りの内容を生かしたり,キャリア教育の視点を踏まえた授業を提案したりすることで,一層「つなぐ」視点が明確になると考える。 キャリア・パスポート(学年初め)や,間をつなぐ実践の中で,学習面の目標を積極的に記述する生徒の様子が見られた。学校行事等だけでなく,各教科等の授業で学んだ内容もキャリア・パスポート(学年末)に反映させることができれば,より多面的に成長を実感し,自己理解を深めたり,学ぶ意欲を高めたりすることにつながるであろう。 140 ①どの取組を振り返りの対象として設定するか 本研究では,生徒の自己理解を深めるため,学校行事を中心に学びをつないだ。各学校によって,学校行事は種類・時期ともに異なるため,どの取組で振り返りシートによる振り返りを蓄積していくか,あるいは蓄積するのが有効であるかについては,検証していく余地があると考えられる。 つまり,振り返りの充実に向けて,回数および時期をどうするか,そして教師からの言葉がけにより,どのような意識づけを行っていくかが大切であり,今後の課題として挙げられると考える。 ②学ぶ意欲の向上をより詳細に見取ること 研究協力校における生徒の様子や記述の変容から,自己理解を深め,学ぶ意欲を向上させるきっかけを生み出すことができたことは先述した。今後はより具体的に,実践から「きっかけ」を得た生徒がどのように変容し,学校生活を送る姿が見られたかなどを追っていきたいと考えている。 キャリア・パスポートは学年・校種をまたいで持ち上がることで,継続的に自己理解を促し,以前と比べて成長を実感しながら将来に向けての意欲を高めることが期待されている。今回の研究を次年度に生かし,生徒がキャリア・パスポートを引き継ぐことによる効果や,将来に向けてどのように意識を高めていくか,引き続き研究していきたいと考える。そして,本研究では中学校第2学年を対象としたので,第1および第3学年も対象として研究を進めることが必要となるだろう。 (2)今後に向けて 最後に,今後の展望を三点に分けて述べる。 中学校 キャリア教育 20 ②キャリア・カウンセリングシートの,振り返 りを行う場面以外での活用 キャリア・カウンセリングシートについては,本稿の図2-5として示したが,生徒がキャリア・パスポートや振り返りシートを書き進める際に,教師からの言葉がけを行う具体例として活用した。今後は振り返りの場面だけでなく,各教科等の授業や,日常的な言葉がけ等,他の場面でも活用できるようなシートを作成・検証していきたいと考えている。 先述した通り,どの場面,どの生徒にも効果があるような言葉がけは存在しないであろう。その点に注意を払いつつ,さまざまな言葉がけの例を提示し,実践を積み重ねることで,さらなるキャリア教育の充実につながるのではないだろうか。 ③京都市版キャリア・パスポートの活用 キャリア・パスポートは令和2年度より取組が開始されるが,本市でも京都市版キャリア・パスポートである「生き方探究パスポート」が示された。その活用についても,本研究で得られた知見を生かしつつ,検証していきたいと考えている。 全国を見渡せば,既に独自のキャリア・パスポートを作成している自治体もあるが,本研究で重点化した「目標」,「振り返り」そして「自己理解」に関わる項目はどのキャリア・パスポートにも盛り込まれているのではないだろうか。先述の通り,キャリア・ポスポートは生徒にとって,自己理解を深めるためのものだからである。したがって,各地でさまざまなキャリア・パスポートが存在したとしても,本研究でポイントとして挙げた内容がどこかで役に立つのではないかと考えている。 本研究では,各学校において今まで行われてきた取組を大切にした。取組後の「振り返り」においてポイントとなる視点や,全体の流れ等が少しではあるが示せたのではないかと考えている。令和2年度からのキャリア・パスポート導入に向けて,少しでも参考になる部分があれば幸いである。 最後に,キャリア・パスポートに関わる実践を通して,生徒が少しでも成長を実感し,前向きに取り組む姿が見られることを目指し,共に話し合いを重ね,貴重なご意見,そして実践をいただいた研究協力校の皆様に心より感謝申し上げる。 おわりに

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