001総教CR030517R1研究論文(田中)
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図4-4の結果から,約9割の生徒が,生き方探究・チャレンジ体験やキャリア・パスポートを通して,学ぼうとする意欲の高まりを実感できたことが分かった。本研究の実践により,ほとんどの生徒に対し自己理解の深まりとともに,学ぶ意欲の向上にもつなげることができたと考えられる。 (2)教師(大人)の対話的な関わりから 図4-5の結果から,教師との対話的な関わりがあった生徒のうち,8割以上がキャリア・パスポートの記述に効果があったと感じていたことが分かった。また,生徒の総数が58名であったことから,実に7割近くの生徒が限られた授業の中で教師との対話があったと感じていたことも分かった。生徒の実態に合わせ,教師が対話的に関わることが有効であると捉えられるのではないだろうか。 0 0 このように,学年初めから学年末にかけて振り返りを記述し,蓄積する中で,徐々に内容が具体化していき,自己理解を深め,成長を実感することにつながった生徒の様子や記述が見られた。 また,キャリア・パスポート(学年末)の実践終了後,B校の生徒に「学ぶ意欲」に関わるアンケートを実施した。調査結果は以下の図4-4の通りである。なお,対象人数は58名である。 キャリア教育を進める上で重要である,教師との対話的な関わりについても成果をまとめておく。 本研究において,生徒の自己理解を促し,深めるような教師からの言葉がけの例示としてキャリア・カウンセリングシートを活用した。具体的な対話については,第3章第3節に取り上げた。 実践後,第3章で挙げた生徒,担任双方にインタビューを行った。まず生徒にインタビューすると,「振り返りの活動は過去にも数多く取り組んでいるが,キャリア・パスポートでの振り返りは今までよりも具体的な感じがした」と語っていた。教師との対話的な関わりがあったからこそ,記述をより進めることができ,今後に向けて大切にしたい内容が具体的になったのではないだろうか。 また,自分の立てた目標については,「今までよりも,少しは達成に向けて努力していきたいと思っている」と語っていた。今回の振り返りを通して自己理解を深め,今後に向けて前向きに取り組む意欲を高めることができたといえるであろう。 48.3% 6.9% そして,担任にもインタビューを行った。実践の成果として,①振り返りシートはキャリア・パスポートの記述に向けた記録の蓄積という役割だけでなく,普段の生徒理解に役立てることができること,②それにより,キャリア・カウンセリングシートを用いた対話的な関わりをいつ,誰に行うことが適切かを自分なりに判断する材料となったこと,③生徒に対する言葉がけの内容が変わるとともに,生徒に対する見方が肯定的なものに変わってきたことを挙げた。これらの成果を生かし,継続的に生徒理解を行い,一人ひとりのキャリア形成につながるよう取り組むことが大切である。 こうした「教師との対話的な関わり」についても,生徒にアンケートを実施した。調査結果は以下の図4-5の通りである。なお,この質問については実際に教師との対話を行った生徒のみが回答したため,対象人数は39名であった。 第2節 課題と今後の展望 (1)実践から明らかになった課題 本研究を通して,キャリア・パスポートの実践をより効果的なものとするために,振り返りシートおよびキャリア・カウンセリングシートを活用することの有効性が示唆された。しかし,次のような課題も明らかになった。 139 (n=39) 5.1% 7.7% (n=58) 5.2% 先生との対話を通して,キャリア・パスポート28.2% 図4-5 アンケート結果⑤(教師との対話的な関わり) 中学校 キャリア教育 19 あてはまるややあてはまるあまりあてはまらないあてはまらない生き方探究・チャレンジ体験や,キャリア・パスポートを通して,理想の自分に近づくために,学校生活の中で学ぼうとする意欲が高まった39.6% 図4-4 アンケート結果④(学ぶ意欲の向上) あてはまるややあてはまるあまりあてはまらないあてはまらないへの記述をさらに進めることができた59.0% 2040608010020406080100

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