次に,図4-2の結果から,9割以上の生徒が,振り返りシートによって自分の課題(目標)が明確になったと感じられたことが分かった。本研究で重点化した自己理解にあたる内容について,ほとんどの生徒がより具体的なものとなったことを実感しており,一定の成果として挙げられよう。 そして,振り返りシートとキャリア・パスポートとの関わりについても調査した。その結果が以下の図4-3である。 思いつく内容として,何とか「真面目」と一言書き記した印象であった。学年初めの段階では,自己理解にあまり積極的でない様子が窺えた。 その後,この生徒はさまざまな取組を経験し,振り返りを蓄積した。そして,学年末の研究版CPにおける,「中学2年生になって新たに成長・発見したこと」の項目に,次のような記述を残した。 図4-3の結果から,約8割の生徒が,蓄積した振り返りシートの内容がキャリア・パスポートの記述に役立ったと感じられたことが分かった。振り返りシートに記述し,蓄積することを通して,生徒が自己理解を深め,次の取組に向けて学ぶ意欲を高めることにつながった様子は先述した。そのように蓄積した記述を,ほとんどの生徒がキャリア・パスポートに反映させている姿が窺えた。 しかし一方で,約2割の生徒については,振り返りシートが役立ったと実感できなかったことになる。この結果は,今回の振り返りシートが学校行事をもとに学びをつないだことが影響しているものと考えられる。生徒によっては,キャリア・パスポートへの記述として,例えば部活動等の場 この生徒は,研究版CPにおいて,「印象に残った出来事や場面」として生き方探究・チャレンジ体験を挙げており,その時に記述した振り返りシートの内容を反映させている姿があった。「人のことを考える」といった「大切なことを発見することができ」ており,新たな発見を具体的に記述している。ここに自己理解の深まり,変容を見取ることができるであろう。そして,それらの発見により,「少しだけ成長できたような気がします」と,自身の成長を実感することもできている。 00138 振り返りシートを記述したことで,自分が取り組む課題(目標)が明確になった36.2% 図4-2 アンケート結果②(課題に対する自己理解) 振り返りシートの内容が,キャリア・パスポートを記述するときに役立った24.1% 図4-3 アンケート結果③(振り返りシートの活用) 56.8% 53.5% 17.2% 面について取り上げた内容も見られた。このように,学校行事以外の場面を中心として記述した生徒にとっては,今回蓄積した振り返りシートの内容をあまり反映させることが無かったので,役立ったと感じづらかったのではないかと考える。 以上のアンケート結果から,ほとんどの生徒が振り返りシートへの記述によって,自己理解を深めたり,記述した内容をキャリア・パスポートに反映させたりすることができたと分かった。 ②キャリア・パスポート 本項では,キャリア・パスポートに関わる成果を,記述内容,アンケート結果の順に取り上げる。 まず,キャリア・パスポートの自己理解に関わる項目における記述内容の変容(自己理解の深まり)について,一人の生徒を例として取り上げる。 この生徒は,まず学年初めの研究版CPにおける,「私の自己PR」の項目に,次のように記述した。 ○私の自己PR ・真面目 ○中学2年生になり新たに成長・発見したこと ・自分の生き方や,大切なことを発見すること ができた。例えば,人のことを考えるという ことを学び,少しだけ成長できたような気がします。 (n=58) 3.5% 3.5% (n=58) 5.2% 中学校 キャリア教育 18 あてはまるややあてはまるあまりあてはまらないあてはまらないあてはまるややあてはまるあまりあてはまらないあてはまらない2040204060806080100100
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