(1)生徒の記述内容から 0○そのために身につけたいと思う力 ・ポジティブに考える ○今,頑張りたい・チャレンジしたいこと ・部活 生徒は,担任からの言葉がけをもらうまでは,「めんどくさがらない」とだけ書いている状態であった。担任はこの記述を切り口とし,より具体的な内容となるよう対話を進めた。 担任は生徒が書いた「ポジティブに考える」という記述に対し,学習面を例として肯定的に捉え,それをもとにして書き進めるよう促した。この生徒は,研究版CPの上段にある「印象に残った出来事や場面」の項目に,部活動を挙げている。対話を進めるうちに,自分がなぜ「ポジティブに考える」ことを身につけたいと思ったのかが整理され,より具体的な目標になったものと考えられる。 そして,この生徒の自己理解に関わる項目について,次のような記述が見られた。 ○中学2年生になって新たに発見したこと ・がんばってきたけど,負けるのがくやしい。 (部活) ○他者から新たに学んだこと ・きょうふ。 →強くなるために。 担任との対話の後,「強くなるために」の一言を,もともと書いていた内容に書き加える姿が見られた。対話をしていくうちに,自分にとって部活動が思考の中心にあり,時には厳しく指導されることがあっても,全て自分がさらに成長するためなのだと「ポジティブに考える」ことが大切であることに気づいたのである。そうした気持ちを感じ,より具体的な記述となるように書き加えたものと考えられる。 キャリア・パスポートにどれほどの記述ができるかは,生徒によりさまざまである。この生徒は一行記述することがそれほど簡単なことではなかったと思われる。そうした中で,教師と対話することにより少しでも具体化された内容を書き残せたことは,この生徒にとって大きな自己理解の深まりであり,今後につながるのではないだろうか。 以上より,キャリア・カウンセリングシートをもとにした言葉がけを通して,生徒が自己理解をさらに深め,キャリア・パスポートへの記述を進めていくきっかけとなり得ることが示唆された。 137 (n=58) 3.5% 8.6% 次章では,本章で述べた実践から得られた成果や課題,今後の展望について述べていきたい。 第4章 研究の成果と課題 第1節 研究の成果 実践を通して,生徒は振り返りを記述し,蓄積した。その中から変容が見られた内容を取り上げ,研究の成果としたい。以下,振り返りシート,そしてキャリア・パスポートに分けて述べる。 ①振り返りシート 第3章において,生徒による振り返りシートの記述内容を示しつつ,本研究で取り組んだ実践を挙げた。生徒は振り返りを積み重ねることで,自己理解を深め,次の取組に向けて積極的に目標を立てることができていた。 特に,第3章第2節で取り上げた生徒Aおよび生徒Bの記述から,振り返りシートを蓄積することで,学校行事での学びをつなぐことができると分かった。全員にそのことが意識化されたわけではないが,教師にとっては生徒理解のツールとして,振り返りシートが活用できると考えられる。 また,B校では,振り返りシートに関して,次のような項目でアンケートを行った。調査結果を以下に図4-1,4-2,4-3として示す。なお,対象人数は全ての項目において58名である。 あてはまるややあてはまるあまりあてはまらないあてはまらない振り返りシートを記述したことで,自分が新たに36.2% 図4-1 アンケート結果①(肯定的な自己理解) まず,図4-1の結果から,約9割の生徒が,振り返りシートによって「自分が新たに成長したところ」,つまり肯定的な自己理解に関わる内容が具体的になったと感じられたことが分かった。 中学校 キャリア教育 17 成長したところが具体的になった51.7% 20406080100
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