生き方探究・チャレンジ体験を通して,親への感謝,礼儀の大切さ,仕事のやりがいを見つけること等について気づいている。それだけでなく,これからの学校生活で生かしていくことを意思決定している点や,自分が努力することによって成長を実感している点も注目すべきであり,生徒それぞれが自己理解を深め,今後に向けて積極的に学びをつなげていこうとする様子が感じ取れる。 舞台発表あるいは展示発表に向けて,学んだ内容をまとめる中で,「考える力」や「伝える力」を身につけたり,のばすことができたと振り返る生徒が多かった。また,生き方探究・チャレンジ体験に向けて,自分が今取り組むべき課題を挙げ,当日に向け意識を高めている様子が窺えた。 ③生き方探究・チャレンジ体験 以上のような事前学習を経験した上で,生徒は生き方探究・チャレンジ体験に臨んだ。事後学習における振り返りにおいて,以下のような内容を記述する生徒の様子が見られた。 導入 【準備物:振り返りシート】 10分 ○今までに記入した振り返りシートを見ながら,「印象に残った出来事や場面」と「選んだ理由」を記入する。 ○記入後,代表者数名が発表する。 (全体:5分) 展開1 【準備物:キャリア・パスポート(学年初め)】 20分 ○導入を踏まえ,以前記入したキャリア・パスポートの内容も見ながら,今回のキャリア・パスポートにおけ る,“自己理解”に関わる箇所を記入する。 「理想の中学生にどれくらい近づけたか」 「中学2年生になって新たに成長・発見したこと」 ○「中学2年生になって新たに成長・発見したこと」が グループ内で1分間スピーチできるよう準備する。 ○記入後,グループで順番に1分間スピーチを行う。 各スピーチ後に,聞き手はスピーチに対するコメン トを行い,発表者に対する気づき等を発表する。 展開2 【準備物:生き方探究・チャレンジ体験の蓄積資料】 15分 ○チャレンジ体験の冊子や振り返りシート等を見返し ながら,将来の自分(30歳の私)をイメージする。 「30歳のとき,どんな自分になっていたいか」 「そのために身につけたいと思う力」 ○将来の自分のイメージに近づくためにはどんなことが大切か,ペアワークで話し合う。 (ペア:3分) ○話し合った内容を発表し,クラス全体で共有する。 終末 ○今までの内容を生かし,「今,頑張りたい・チャレン5分 ジしたいこと」を記入し,意思決定する。 生徒の活動 (個人:5分) (個人:5分) (スピーチ1分→コメント30秒 ×6回分) (個人:5分) (全体:7分) 指導の留意事項 ●蓄積した振り返りシートを見返すことを通して,自分の成長が実感できるようにする。 ●教師は対話的に関わりながら フォローするとともに,様子をみて発表者を決定する。 ●授業全体が,記入のみの時間とならないよう留意する。 ●スピーチを行う前に,自分と向き合う時間を大切にする。 ●書き進められない生徒については,授業者が普段の関わりを生かした肯定的な声かけでサポートする。ただし,無理に書かせることは避ける。 ●他者からのコメントは,「他者から新たに学んだこと」の欄に記入する。グループ毎に人数が違い時間が余るグループ等は,記入の時間に充てる。 ●机を元の配置に戻しておく。 ●以前振り返りシートに書いた内容と,今回記入する内容が変わってよい。現在の自分の考えと比べることを通して,自己の変容が感じられるようにする。 ●授業全体を通し,肯定的に認め合う雰囲気を大切にする。 ●グループおよびペアワークで将来の自分を想像し,前向きに取り組む態度を育成する。 ●今までの内容から,キャリア・パスポートに記入させる。 ・実際に前に出て発表するためにどうしたら分かりやすくなるのか,どうしたら興味を持ってくれるのかなどを考えながら文章をつくることは難しかったけれど,結果的によいものができたと思う。今回学んだ考える力や伝える力を今後に生かしていきたい。 ○これから取り組んでいきたいこと(課題) ・僕がお世話になるところは消防署であるので 今自分の課題の一つである「時間を大切にして行動する」を改善していかないと一つ一つの動きが遅れる可能性があるので,5分前行動などを積極的に取り組み,すばやい動き方をできるだけ早めに身につけておきたい。 ・弱音を吐かず自分のやるべきことをしっかり とこなしていきたいです。また,人に見られ るところで体験するので,いつも以上に気を くばって行動していきたいです。 ・チャレンジ体験を通して僕は,お金をかせい でくれる,親への感謝を改めて感じました。 事業所の人たちは,一番にお客さんのことを 考えていたので,僕も,大人になって仕事に ついたら,お客さんのことをしっかりと考え れるようになりたい。お店の人やお客さんと 関わることで礼儀の大切さを改めて学びまし た。これからの学校生活で,チャレンジで学 んだ礼儀を意識して過ごしていきたい。 ・僕はこの生き方探究チャレンジ体験を終えて いろいろな事を学びました。例えば,働くと いうことは,ただお金をもらうだけではなく て,その仕事のやりがいをみつけることだと 思いました。その他にも,初めは,あまりできなくても努力することによりだんだんできてくることがわかりました。 このように,ただ体験のみとするのではなく,自己理解を重要な視点として振り返りを蓄積することにより,生徒の自己理解をさらに深め,学ぶ意欲を向上させることにつながると考えられる。 第3節 キャリア・パスポート(学年末) 前節のような両校での実践を経て,キャリア・パスポート(学年末)の授業を実践した。 両校ともに,学年初めの実践を土台とし,さらに自己理解を深めることを重点に置き,特別活動の時間に実施した。授業展開は表3-2の通りである。 135 表3-2 キャリア・パスポートの展開(学年末) 中学校 キャリア教育 15
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