001総教CR030517R1研究論文(田中)
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今まで職業あるいは将来についてあまり考えたことが無かったという振り返りは,この生徒だけでなく数名が記述していた。今回の授業が今後に134 <人の手で行いたい仕事> ・接客 ・デザイン ・ケーキを作る <AI(機械)に任せたい仕事> ・材料などの運送 ・商品の補充 ・掃除 グループ毎にさまざまな意見があったが,クラス全体としては,ケーキを作ることに関わる仕事および接客は人の手で行い,お店の管理・運営に関わる仕事はAIに任せたいという方向性であった。 その後,内閣府が提唱する「society 5.0」の動画を視聴した。AI等の科学技術の進歩が著しい中で,それでも人間ができる(やりたい)仕事は何なのか一人ひとりが考えることを通して,将来に向けての意識を高める様子が見られた。この取組は,本研究における「自己理解能力」のうち,「知識・技能」(自己の適性・役割の理解)にあたると考える。将来も見通した上で,自分には何ができるのか,どのようなよい点や強みがあるのか考えることが大切であると考えるからである。 授業後,生徒は振り返りを記述した。その中から,具体的に生徒が記述した内容を以下に示す。 ○今までに比べてがんばったところ ・今までは職業についてあまり考えたことがなく,未来の仕事についてもあまり興味がなかったけど,AIになるかもしれないということや世界に色々な職業があるということを一生懸命考えることをがんばりました。職業についてはまだ関係ないと思っていたけど,お話を聞いたりして自分のしたい仕事などを考えていきたいです。 ○これから取り組んでいきたいこと(課題) ・今,私は,元気にあいさつ,返事をすることができていないことがあるので,チャレンジ体験までに元気よくあいさつ,返事をするということが課題です。私は接客業をするので人とていねいに会話をするようにしたいです。 図3-5 展示発表の様子 そして,文化祭後に振り返りを行い,生き方探究・チャレンジ体験につなぐことを意図した。生徒の中には以下のような内容の記述が見られた。 中学校 キャリア教育 14 ついて考えるきっかけとなったこと,そしてAIについて学び,考えることを通して,自分が直面するであろう将来について,自分事として捉えながら見通す機会につながったことが分かる。 そうした内容を踏まえ,生き方探究・チャレンジ体験に向けて取り組んでいきたいことを意思決定していた。先述の通り,生徒は人の手で行いたい仕事の一つとして接客を挙げており,AIの進歩があったとしても,人と人とのやり取りを大切にしたいという思いを持っている生徒が多かった。このような内容も影響して,「元気にあいさつ,返事をすること」や「人とていねいに会話をする」ことを今後の課題として挙げたものと捉えられる。 ②文化祭取組 文化祭に向けた学年での取組(舞台発表,展示発表)も,「働くこと」をテーマとして進められた。舞台発表では,「10年後の自分はどうなっているのか」「AIとはどう向き合っていけばよいのか」を主題とした劇を披露した。また,チャレンジ体験に向けての事前学習の内容をポスターにして展示物をつくり,将来について生徒それぞれが考えを深めた。図3-5は展示発表の様子である。 ○今までに比べてがんばったところ ・私が今までに比べてがんばった所は,初めて文化祭でクラス発表をして,ゆっくり話したりとか,人に伝わるにはどうしたらいいのかなどを考えるのをがんばりました。

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