001総教CR030517R1研究論文(田中)
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生徒Bは,合唱祭について昨年度はあまり前向きでなかったが,今回はみんなで練習する中で良い思い出をつくることができたと振り返っている。次の文化祭に向けては,合唱祭を通してできた団結力を生かしていていくことを課題としている。 そうした「今までの経験を生かし」,文化祭では今まで以上にがんばる中で,周りの人と協力することの大切さに気づいた。次の生徒会選挙に向けては,自分は立候補しないものの,「学校を支える一人」としての自覚を持ち,今後も前向きに取り組んでいく意欲を高めている様子が読み取れる。 以上のように,学校行事ごとに振り返りシートを蓄積する中で,生徒が自己理解を深め,今後に向けて学ぶ意欲を高めている様子が見られた。こうした振り返りを繰り返すことで,本研究における「自己理解能力」のうち,「思考力・判断力・表現力等」(自分を振り返り,良い点を伸ばし,課題を受け止め,克服していくことができる力)の育成につながると考えられる。 (2)B校の実践―生き方探究・チャレンジ体験 を中心としてつなぐ― <合唱祭振り返り> ○今までに比べてがんばった点,新たな発見 ・今までは合唱祭なんてめんどくさいとか思っ ていたけど,今回の合唱祭は自分から取り組 んで,放課後残って練習したりみんなで朝練 などして,とても良い思い出になった。 ○文化祭に向けて取り組んでいきたいこと ・今回の合唱祭で団結力ができ,まとまりができたかなと思いました。合唱祭を生かしてこのまとまりを文化祭に生かす。 <文化祭振り返り> ○今までに比べてがんばった点,新たな発見 ・周りの人と協力することによって仕事がはかどる。今までの経験を生かして,文化祭は今まで以上にがんばれた。 ○生徒会選挙に向けて取り組んでいきたいこと ・学校を支える一人として選挙によって学校が変わるということを知り,より良い人に生徒会本部を任せたいです。 B校では,1年を通して,「働くこと」に焦点を当てた取組を積み重ねたいとの思いがあり,その中心として生き方探究・チャレンジ体験が位置づ 図3-4 実践の流れ(B校) 中学校 キャリア教育 13 けられていた。職場体験を中心としつつ,他の学校行事等も関連をもたせながら進めていくことが計画された。実践の流れは図3-4の通りである。 図3-4のように,B校では「働くこと」に焦点を当てた総合的な学習が展開される中で,チャレンジ体験に向けた事前学習や文化祭での学年発表が実践された。その中心として位置づけられていたのが生き方探究・チャレンジ体験であり,事前・事後学習を充実させるように計画されたといえる。このような流れではあるが,自己理解を視点として学びをつなぐ点は変わらず重視し,振り返りを蓄積することで自己理解を深め,今後に向けて前向きに学ぼうとする意欲を高めたいと考えた。 以下,時系列に沿って,B校での実践例をいくつか挙げることとする。 ①「10年後のケーキ屋さんについて考える」 キャリア教育の一環,そして生き方探究・チャレンジ体験の事前学習として,総合的な学習の時間に,10年後の未来を想像する授業を行った。 B校では,以前に「キャリア講座」として,いくつかの職種から講師を招き,それぞれの職業について話を聞く機会があった。その時に,約半数の生徒がケーキ屋さんの話を聞いていた。この授業は,「キャリア講座」での学びをつなぐことを意図しつつ,未来の職業について考える中で,将来を見通す意識を高め,今後に向けて各自が取り組んでいく内容を意思決定することをねらいとした。 生徒はケーキ屋さんを例として,ケーキ屋さんに関わる仕事を挙げた後,それらを「人の手で行いたい仕事」,「AI(機械)に任せたい仕事」に分ける活動を行った。例えばあるグループでは,次頁のように仕事を分類していた。 133

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