001総教CR030517R1研究論文(大嶋)
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第1節 キャリア教育の必要性 (1)小学校におけるキャリア教育の位置づけ 新学習指導要領「総則」において,特別活動を要として,学校の教育全体を通してキャリア教育を適切に行うこと(2)が示されたことから,特別活動に学級活動(3)に「一人一人のキャリア形成と自己実現」の項目が新たに設定された。このことによって,小・中・高等学校をつなぐキャリア教育の指導の系統性が明確になった。 (1) 小学校学習指導要領 解説 総則編 東洋館出版 2018年3月31日 P.23 現代社会は,急速なグローバル化の進展や人工知能(AI)の飛躍的な発達などにより,その変化は加速度を増し,今後を予測することが困難な時代を迎えている。そのような中,これらの変化に対応しながら生きていくためには,自分に自信をもち,意欲的に学び続ける力がますます必要である。 今までからも様々な調査により,若者たちが学ぶことや働くことの意義を見出せないこと等が,喫緊の課題となっている。 これらの課題を踏まえて,新学習指導要領「総則」では,キャリア教育の充実を図ること(1)が示された。 これまでもキャリア教育の重要性については言及されてきたが,キャリア教育を通して,「どのような力を育成するのか」「どの教科のどの時間で付けたい力を育成するのか」また,「どのように指導するのか」など,曖昧なまま指導されてきたことが多かった。そこで,本研究では,これらのことを解決するために,キャリア・パスポートの効果的な活用の在り方について研究を進めた。 これは,個々の子どもの将来に向けた自己実現に関わるものであり,一人一人の主体的な意思決定に基づく実践までつなげることをねらいとしている。この時間を活用し,自己のキャリアやこれまでの活動を振り返り,これからの学びや生き方を見通すことで,学校の教育活動全体の取組を通じて,キャリア教育で必要な資質・能力の育成を図っていくことができると考えられる。また,小学校でのキャリア教育では,子どもたちに具体的な将来を設計させることは中心の課題ではなく,その基盤の形成に向けた指導・支援が大切である。 小学校の時期は,身近な人から集団へと人の関わりを広げながら,働くことの意義を理解し,自分の役割を主体的に果たそうとする態度を育成する時期である。また,日常の生活や学習に目標を立て,努力して達成しようとしたり,自分の特長に気付き,自分のよいところを伸ばそうとしたりする時期である。 そのため,学校教育全体において,様々な人と 関わりながら,人のために働くことの意義を理解することや,自分ができることや,したいことを理解し,行動すること,これから学ぶことの意欲につなげることが大切である。 (2)キャリア教育で育む資質・能力 中央教育審議会答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(以下「在り方答申」という)では,キャリア教育について次のように示している。(3) なる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を 促す教育 キャリア教育とは,一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てること。キャリア発達を促す教育ということになる。一人一人の社会的・職業的自立に向けて,必要な基盤となる能力とは,「在り方答申」に4つの能力として示されている,この4つの能力を整理したものを以下に示す。(4) ○人間関係形成・社会形成能力 「人間関係形成・社会形成能力」は,多様な他者の考えや立場を理解し,相手の意見を聴いて自分の考えを正確に伝えることができるとともに,自分の置かれている状況を受け止め,役割を果たしつつ他者と協力・協働して社会に参画し,今後の社会を積極的に形成することができる力である。 ○自己理解・自己管理能力 「自己理解・自己管理能力」は,自分が「できること」「意義を感じること」「したいこと」について,社会との相互関係を保ちつつ,今後の自分自身の可能性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同時に,自らの思考や感情を律し, かつ,今後の成長のために進んで学ぼうとする力 である。 一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤と小学校 キャリア教育 1 101 はじめに 第1章 今,求められるキャリア教育

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