001総教CR030517R1研究論文(大嶋)
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118 らお話していただいたのは,友だちからの肯定的な言葉がけを見て「家でも,はげましの声をかけ よう」ということがあった。 この研究での取組は,子どもが成長を実感し自 己理解を深めるだけではなく,教師の授業や取組の改善や教師や保護者の児童(子ども)理解につながると言える。 第2節 さらなる充実を求めて 実践を通して,キャリア・パスポートは小・中・高等学校と学年や校種を越えて自身の成長をつなぐ「縦のつながり」をより強力にするものとして有効であると感じた。これらは1年間の成長を蓄積し,次の学年へとつなぐことで可能になる。 そしてこれらのつながりをもたせるためには,本研究で行った「成長ノート」を活用することが有効である。「成長ノート」で,1年間を見通し,自分の成長について繰り返し振り返ることで「横のつながり」を強力なものとする。このような取組で横をつなぐことによって,結果縦のつながりが生まれてくるのである。 短期間ではあったが,これらの取組は,自分の成長について振り返ることや,「自己理解能力」や「自己肯定感」を高めるものとして有効であると考えられる。さらに,これらの取組を充実した取組にするには3つのことが大切であると考える。 (1) 成長ノートの蓄積 学校行事では,成長ノートを活用し,前回の活動と比べて振り返ったり,活動を始める前と比べて振り返ったりすることで,より自分の成長について振り返ることができた。そのことによって,より自分の成長を実感できた。この取組をさらに充実した振り返りにするには,学年を超えて振り返られるように,成長ノートを蓄積することも有効である。蓄積することで,例えば,キャリア・パスポートからだけでは見えない振り返りができ,より自分の成長を実感することができるだろう。特に,他者からもらった肯定的な言葉がけを残しておいたりすることで,より効果的に自己理解を深めたり,自分の成長が蓄積されることが,自己肯定感の高まりへとつながっていくと考えられる。 小学校 キャリア教育 18 (2)各教科・領域の振り返りと 学校行事では,活動の本番だけではなく,活動の過程にも子ども自身が成長を実感する場面が多い。そのため,日常から自分の成長を書きためておくことは非常に大切である。 これと同様に,各教科・領域等の振り返りの際,教科で付けたい力と同様に,キャリア教育で付けたい力に関しても視点を絞った振り返りシートを作成することも考えられる。 このような取組を通して,子どもたちが自分の変容に気付き,自分の成長を実感できる手助けにつながっていくと考えられる。 (3)肯定的な言葉がけ 研究・実践を行う中で,肯定的な言葉がけは,子どもの「自己肯定感」を高める上で,大変重要な役割があることがわかった。それと同時に,肯定的な言葉がけについては,子ども一人一人にとって,いつ,どこで,どんな声かけが効果をもたらすかが違うことも分かった。そのため,いつ,どのような場面で,誰に,どんな言葉がけをもらうことが効果的であるかについての分析については,課題が残る。子ども同士が互いに「自己肯定感」を高め合うための様子については次年度の課題にしたい。 また,子どもたち同士での肯定的な言葉がけについてはとても効果がある様子が見られた。そのため,子どもたちに,研究で見えてきた視点で交流できるようにしていくこと効果があるのではないかと考えた。まずは教師がモデルとなり,効果的な言葉がけの視点でほめたり,コメントをしたりするなどで,活動を繰り返すことで子どもたちが豊かに肯定的な言葉がけを知ることが1つの手段になるかもしれない。 本研究の趣旨を理解し,協力して下さった京都市立岩倉北小学校と京都市西大路小学校の校長先生をはじめ,自らの学級での姿を調査対象として協力して下さった研究協力員の先生方,いつも温かく迎えて下さった両小学校の教職員の皆様に心から感謝の意を表したい。 おわりに 成長ノートをつなぐ

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