られる。しかし,両項目ともに「少しあてはまる」「あてはまらない」に変化したことにも注目したい。そのような子どもたちは,実践を通して,「自己理解能力」が高まり,自分を正しく見取れるようになってきたてめではないかと考えられる。つまり,評価規準がその子どもの中で変化し,より厳しく自分を評価した結果であると考えられる。実際にキャリア・パスポートはじめを見直すと,なりたい自分について見直し,加筆している児童の姿が多く見られた。実践開始直後では,自分について深く考えられなかったり,なりたい自分についても考えられなかったりしたが,研究の取組を通して,自分の成長について考えることで,「自己理解能力」が高まり,正しい目標設定やなりたい自分像の高まりが見え,「自分のよさ」についての数値が下がったと考えることもできる。 また,自分の成長を厳しく評価する様子が見られた。そのため,このような結果になったと考えられる。しかしこれらは決してマイナスではなく自己理解を深めていく過程だと考えられる。この結果を受け止め,継続して教師が肯定的に指導したり,言葉がけをしたりすることで,子どもは自信をもつことができると考えられる。 これらのことは,結果を踏まえ,更なる「自己肯定感」の高まりについては課題が残る。 (3)研究協力員ヒアリングから 子どもたちは,キャリア・パスポートでなりたい自分について考えたり,「成長ノート」で学校行事ごとの自分のめあてを考えたり,肯定的な言葉がけの取組を行ったりしたことで,一人一人が自信をもって学校行事に取り組むことができるようになった。 そのことで,普段の学習においても,自信をもって発表する姿や,意欲的に学習に取り組む子どもの姿が見られた。なりたい自分に向けて頑張ることや,友だちや先生からなどから肯定的な言葉がけをもらうことで,子どもたちのやる気に変化が見られた。 これまでの学校行事の振り返りでは,学校行事当日の様子だけを振り返ることが多かったが,今回,「成長ノート」を活用し,これまで学校行事で成長したことについて振り返ることで,学校行事で取り組んだ活動の過程にも注目し,各時間身に付いたことについて振り返る姿が多く見られた。活動全体を意識することで,活動の成果のみに注目するのではなく、活動の全体で実践した自分た小学校 キャリア教育 17 ちの努力について振り返ることができる子どもたちが増えたと考えられる。 肯定的な言葉がけの取組で,友だちから自分の 頑張っていたことを認めてもらったり,友だちの頑張っていたことを認めたりする活動をしたことによって,友だちの頑張りを認め合う集団になってきた。そのことで,自信をもって自分が成長したと言える子どもが多く見られた。こうして学校行事の振り返りを通して,自分についての,肯定的な自己理解の力が身に付いたと考えられる。この活動によって多くの子どもは「自己肯定感」を高めたのではないかと考える。 教師が「成長ノート」で子どもの頑張りを見取ることで,子ども一人一人が今何に向かって頑張ろうとしているかが分かり,子どもの理解に役立った。子どもたちがどのように考えて行動しているのかがわかり,児童理解に役立った。それによって,子どもたち一人一人へのはげましの声や関わり方が具体的になったり,変化したりした。 この取り組みを通して,学校行事でのつながりや付けたい力について,学年の先生と考え,共有する時間をとるようになった。子どもたちに「どんな力を付ける」のか「この時間でこうしよう」など,計画的に学校行事を取り組めるようになった。 今回,キャリア・パスポートや「成長ノート」を活用し,個人懇談会の資料として提示した。 保護者には,子どもたちが今,「どんな自分になりたい」のか,そのために「どんなことをがんばっている」のかなど,資料を基に話すことができた。個人懇談会中に,キャリア・パスポートや「成長ノート」へはげましのコメントをもらうことができ,子どもたちへのはげましへとつながった。 個人懇談会後,保護者へインタビューを行ったところ, などの声をいただけた。また,共通して保護者か 「子どもが学校でどんなことをしているのかがわからなかったけれども,キャリア・パスポートや「成長ノート」を見せていただいたことで,子どもの成長の変化がわかりやすかったことや,子どもの頑張りが分かった。」 「2年生でこんなに振り返りを書いているなんてすごいと思った。家で学校の様子について話す機会がないので,このような取組はとてもありがたい。」 117
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