第1節 研究の成果・今後の課題について (1) 児童の実態から 〇肯定的な言葉がけの成果 114 図3-17 5年 キャリア・パスポートおわりの様子 姿)」になるために,次の学年で,頑張りたいこと,挑戦したいことについて考え,交流した。そこでは,図3-17「5年キャリア・パスポートおわりの様子」のようにキャリア・パスポートはじめで考えた「なりたい自分」と変容している子どもがいた。 はじめの様子 加筆されたもの 教師は,変容についても自分の成長だと認めて,加筆するように声かけをした。 「そのためにがんばること」については,自分について考えることや友だちとの交流を通して,①友だちに聞いてもらうことや②友だちの頑張ることを聞くことで「自分のそのためにすること」のところに書き加えるようにした。5年生では,交流の際,アドバイスしあっている様子やなりたい自分について実践している人にインタビューをする姿が見られた。その中から,次年度自分が挑戦したいことや頑張りたいことなどについて意思決定し,実践へとつなげられるようにした。 肯定的な言葉がけの取組を行った後に,子どもたちに記述式のアンケートとインタビューを行った。それらを基に,自己理解の深まりについて検証した。 2年生のA児の学習発表会での様子については,学習発表会での活動のめあてを「苦手なことにも第4章 研究の成果と今後の課題 挑戦すること」としていた。活動中,自分の苦手な「人の前で発表すること」を克服するために,様々な場面で取り組んでいる姿が見られた。インタビューでは,このようなことを話していた。 図4-1 2年A児 肯定的な言葉がけをもらっての感想 「動きや声が大きくて遠くまで届いていたよ」という言葉がうれしかったです。わけは,自分はこのことが苦手だったし,最初はできなかったけど,どんどん成長したことがわかりました。 このように,肯定的な言葉がけをもらうことで,自分がめあてとしていたことが達成したことを実感することができた。また,自分は頑張れた,成長したことができたと感じていた。それらが,よりよく自己理解を深めていくことにつながった。それが,その後の活動でも自信をもって発表する姿として表れてきた。 また,5年生でも,肯定的な言葉がけをもらうことで,自分の成長を実感し自信を深めている子どもの姿が見られた。 ぼくは,「動きの工夫を頑張っていたね」「大きい声だったよ」のメッセージがうれしかったです。理由は,あまり大きな声を出したり,動きをつけて話したりすることがあまり得意でなかったけど,今回学習発表会を通してできたし,それに気づかせてくれた言葉なのでうれしかったです。 5年生のC児の宿泊学習での様子について述べると,宿泊学習での活動のめあてを「友だちのことを考えて行動する」をしていた。活動中,リーダーとして困っている友だちに声をかけたり,係の仕事のアドバイスや提案などを積極的に行っていたりする姿が見られた。肯定的な言葉がけでのインタビューでは,以下の文のように 私は,「係の仕事でアドバイスしてくれてありがとう」という言葉がとても自信になりました。どうしてかというと,自分では,役に立っているのか不安だったけど,こうしたメッセージをもらうことで自分は「役に立った」のだとわかったからです。これからもやっていきたいと思います。 図4-2 5年B児 肯定的な言葉がけをもらっての感想 図4-3 5年C児 肯定的な言葉がけをもらっての感想 小学校 キャリア教育 14
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