①考えられた仮説が観察,実験などによって検 ②仮説を観察,実験などを通して実証するとき, ③上記二つを満足することにより,多くの人に 上記のことから観察や実験をすることだけが「科学的」というわけではないことが分かる。①は,調べることが可能な事物・現象であること。②は事実や情報が他者によって再現したり,確認したりできること。③は事実や情報,考えが多くの他者によって認められることと考える。 32 先述した理科で育成を目指す資質・能力と照らし合わせると(2)の「観察,実験などを行い,問題解決の力を養う。」に該当する。この「問題解決の力」とは,整理すると以下のようになる(12)。 ・差異点や共通点を基に,問題を見いだす力 ・既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説を発想する力 ・解決の方法を発想する力 ・得られた事実から自分がもっている考えを検討し,より科学的なものに変容させるといった妥当な考えをつくりだす力 上記から,科学的に問題を解決する力とは問題を見出し,観察や実験の方法を発想し,そこで得られた事実に基づいて思考・判断して妥当な考えを導く力ということが考えられる。その際,論理的に考え表現する力が重要となる。 さらに,「科学的」とはどういうことなのだろうか。小学校学習指導要領解説理科編を整理すると次のように示されている(13)。 討することができること。 人や場所を変えて複数回行っても同一の条件下では,同一の結果が得られること。 承認され,公認されること。 以上の条件を検討する手続を重視すること。 つまり,「科学的」とは多くの他者によって事実や情報,導き出された考えが再現されたり承認されたりするといった性質をもつものだということである。 加えて,上記の「条件を検討する手続を重視する」ということは,検討の視点をもって活用することと考えられる。検討の視点をもって活用するとは,例えば「本当に自分の仮説が観察,実験などを通して確かめられるのか」や「観察,実験などを通して得られた事実が偶然ではないのか」というように問題解決のプロセスの中で自らの思考を振り返り,内省的に考えるといった批判的な思考(以下.クリティカル・シンキング)なのである。 以上のことから,本研究で目指す資質・能力を小学校 学習指導法 4 科学的な問題解決力とし,次のように考える。 他者による再現性のある事実や情報をもとに, 多くの人が納得するよう論理的に考え,かつ, クリティカル・シンキングして答えを導く力 (2)各教科等の枠組みを越えた学習の意義 科学的な問題解決力は,理科の各単元の中で問題解決の学習活動を通して習得していく。そこで習得したスキルを次の単元で発揮・活用するといった探究的な学習を展開していくことで,さらなる育成に迫ることができるだろう。一方で,より効果的に育成していくために,平成28年答申では「各教科等の学習とともに,教科等横断的な視点に立った学習が重要であり,各教科等における学習の充実はもとより,教科等間のつながりを捉えた学習を進める必要がある。」と示している(14)。論理的な思考力やクリティカル・シンキングは,各教科等に共通して育むことのできる資質・能力であることを踏まえると,理科以外の教科においても育成することができるのである。資質・能力の習得を目指す上で,各教科等での学びを関連付けながら学習を展開していくことが重要である。 しかし,奈須(15)は習得した知識・技能が容易に様々な場面で活用できるようにはならない,簡単には転移しないと述べている。これは,各教科等の学びは日常生活におけるある一部分の限定的な文脈を切り取って学んでいることが多いためであろう。そのため,各教科等の学習の中だけで探究的な学習を進めても,生活や社会といった複雑な文脈の中で活用できるとは限らないのである。知識・技能や思考スキルの転移を可能にするには具体的な文脈や状況を豊かに含みこんだ本物の社会的実践への参画として学びをデザインすることが必要だろう。このことは,理科の学習でも同様で,2節で述べた,1年次での課題に挙げた理科を学ぶ意義・有用感を感じないことに通じる。日常や生活に近い状況で学習し,習得した資質・能力を発揮・活用する場が必要になる所以であろう。 そこで,理科で目指す科学的な問題解決力を総合的な学習の時間も含めて習得・活用のサイクルとして捉えていくことが大切である。平成28年の答申において総合的な学習の時間の教育課程についての考え方の中で「各教科等の『見方・考え方』を総合的(統合的)に働かせ,広範かつ複雑な事象を多様な角度から俯瞰して捉え,実社会や実生活の複雑な文脈の中で物事を考えたり,自分自身の在り方生き方と関連付けて内省的に考えたりする
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