001総教CR030517R1研究論文(西村)
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きるようにした。 思考を促す問いかけ新たな問題解決の学習活動へ自分との対話・・・既習内容,生活経験教材との対話・・・教科書や資料、自然事象30 の課題を解決し,「生きる力」を育成する上で,教員の担う役割は大きい。また,下線部①の課題を解決するにあたり,その他に指摘された課題との関わりがあると考える。なぜならば,下線部②の「特定の教科等だけでなく,全ての教科等のつながりの中で相互の連携を図り育むこと」で,汎用的な能力となり生活や社会の中で活用できたり,一つ一つの学びが何のためかを自覚できたりすると考えるからである。 このような課題を踏まえ,「生きる力」の育成を目指す学習とは,どのような学習なのであろうか。 これまでに「生きる力」の育成の中核を担う位置付けとして,総合的な学習の時間が創設された。そこでは,探究の過程を通すことで「生きる力」の育成に迫ろうとした。この探究の過程とは「物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営み」であり,習得・活用といったサイクルを学びの過程で繰り返していくことが大切であると示されている(5)。このような習得・活用といった探究の過程を新学習指導要領では総合的な学習の時間のみならず,各教科等の学びにおいても必要なプロセスであると示している(6)。各教科等において,知識(概念)や思考力を習得し,習得した知識(概念)や思考力を新たな問題解決の学習で発揮・活用し,継続的に学んでいくことで各教科等の本質的な学びが可能となっていくと考えられる。つまり,「生きる力」の育成に向けて,各教科等の枠組みの中での探究的な学習と,各教科等の枠組みを越えた探究的な学習の充実が必要である。 第2節 1年次の研究の概要 1年次の研究では,科学的な思考力・判断力・表現力等の育成を目指して理科の問題解決の学習活動の在り方について,研究を進めた。思考を促す問いかけや根拠に基づいて考えることのできる授業設計をすることで,目指す子ども像の育成に迫ることができると考えたからである。右図1-1に1年次の研究の構想図を示す。 具体的には,自然の事物・現象との出合いから問題設定の過程で,問題解決の学習活動を進める上で,子どもが解決したいという思いがもてるよう指導者の問いかけにより自身・他者・教材との対話を促し,問題意識を醸成させた。次に,追究する過程で,「事実や証拠」と「理由」,「主張」との関係をワークシートに示し,思考を可視化し子どもたちが考えを表現する場面で論理的に思考で 加えて,単元末には育んだ資質・能力を発揮できるよう,活用・発展の時間を位置付けた。そこでは,学習した単元に関わる新たな自然の事物・現象を提示し,学んだことを適用する場面を意図的に設定し,科学的な思考力・判断力・表現力等のさらなる育成を目指した。これらの手立てにより子どもたちの科学的な思考力・判断力・表現力等が育まれたかを見取るため,論述確認テストを作成し,活用した。論述確認テストで明らかになった子どもの実態を次の単元に生かしていくことで,より効果的に資質・能力を育成することを目指した。 これらの取組の結果,科学的な根拠に基づいて,理由を加え,主張する子どもの姿が見られるようになった。論述確認テストでは,いずれの研究協力校でも平均正答・準正答率が10ポイント上昇した。さらに,授業の話合いの場面では,指導者の指示がなくとも「事実や証拠は何だろうか。」や「理由を考えるのが難しいな。」というつぶやきがあった。このようなつぶやきは,自分の考えを表出する際,「事実や証拠」と「理由」「主張」を示すことの大切さを認識したからだと考えられる。 上記の成果が見られた一方,課題も散見された。 一つ目は,「事実や証拠」に「理由」を加え「主張」する姿が見られたが,得られた「事実や証拠」の適切さや,「主張」につながる「理由」が妥当性のあるものかを吟味する姿があまり見られなかったことである。実験・観察等や思考の過程を振り返って吟味する手立てが不足していたことが要因であると考える。 二つ目は,適用場面を位置付け日常生活における自然の事物・現象について考えていったものの,科学的な思考力・判断力・表現力等の育成を目指して目指す⼦ども像図1-1 1年次の研究構想図 小学校 学習指導法 2 「⾃ら問題を⾒出し,主体的に追究する中で,⾃然の事物・現象について理解する⼦」「新たな課題に対して,学んだことを活⽤して説明したり論述したりして解決できる⼦」追究問題設定様々な⾃然の事物・現象フィードバック⼦ども他者との対話・・・話合い活動理科の学習指導改善(単元末)論述確認テスト適用場面対話的な学び結論・まとめ考察観察・実験など予想・実験計画どうして疑問なぜだろう不思議指導者「根拠」や「理由」「主張」を整理した授業設計

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