001総教CR030517R1研究論文(西村)
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おわりに 日々,お忙しい中にもかかわらず,よりよい学習指導法についての研究に快く協力していただいた京都市立桂川小学校と京都市立桃山小学校の校長先生をはじめ,研究協力員や学年の先生,いつも温かく迎えてくださった両校の教職員の皆様,そして,何より一生懸命に学ぶ姿を見せてくれた子どもたちに心より感謝の意を表したい。 n=88(人)48 ・理科で,主張,事実・しょうこ,理由などは国語の感想文などにも使えそうだからです。(4年) ・理科の学習でよりよい主張を出すために主張・事実・理由を学んだ。それがほかの学習で文章を書くときにそれを入れると,とても良くなるから。(5年) ・理科でみんなと話合ったり説明したりすると,他の学習でもそれを生かして自信をもって話合いができるから。(5年) 理科学習の大切さ図4-11 児童質問紙調査回答結果⑦ きるということを実感する機会が無かったためだと考える。 また,アンケートにはどうしてそのように思うかを自由記述で問うた回答を以下に示す。 記述を見ると,国語科で論証フレームを使って考え,表現できることや,他教科での話合いの仕方の活用等の記述がある。「そう思う」という回答は減少しているものの,考え方や学習の仕方を意識することができ,他教科へつないでいけると考えている子どもも現れたことは成果の一つとして考える。 <理科の学びの有用性> 本研究実践を終えた子どもに理科の学びが大切だと思うかを問うた結果を図4-11に示す。 実践前 実践後 図4-11を見ると「そう思う」と回答した子どもの割合が78.7%となった。「あまり思わない」「思わない」は0.0%であった。このことから,本研究の手立て等が理科を学ぶ意義や有用性の実感につながったと考えられる。 そこで,なぜそう思うかを自由記述で問うた。 A校第4学年の子どもの中には,実践前では「もし理科の(専門とする)人になったら,小学校に習ったことを使うから。」と回答している子どももいた。このような回答は理科の学びが大人になったときに生きるのではないかと前向きな回答であるが,「理科の(専門とする)人」とあるように,限られた世界での話になっている。しかし,実践後にその子どもは「社会に出たときに説得する場面で主張の仕方が大切になるから。」と回答した。小学校 学習指導法 20 (19) 拙稿 「No.596 科学的な思考力・判断力・表現力等の育成を目指して(1年次)-問題解決に向かう学習活動の在り方-」『平成30年度研究紀要』 京都市総合教育センター2018.3 (20)前掲(19) 理科を通して,理科に関わる知識だけでなく,どのような力が育まれたのか自覚する様子が伺える。 B校第5学年でも,実践前は漠然とした意見が,実践を通して考え方や説明の仕方といった汎用的なものへと変化していることから,本研究の手立てが有効であったと考える。 第3節 よりよい指導を目指して 本研究で,理科と総合的な学習の時間において科学的な問題解決力を生かした探究的な学習を行った。論理的に考え,表現する場面やクリティカル・シンキングを必要とする場面は,学校教育において多様にあると考える。 例えば,国語科における文学作品の読解において,どのような記述(事実・証拠)からどのような解釈(理由)をして,登場人物の思いや心情を想像した(主張)のかという学習が考えられる。他にも,体育科の跳び箱運動において,どうしたら跳び箱を跳び越えることができるかを考える時などが考えられる。 また,算数科において問題の解き方を話合う中で,一人一人のクリティカル・シンキングで構築した考えを,グループや全体交流の場面につなげていくことが考えられる。 このように,多くの教科・領域で発揮・活用させていくことでさらなる深い習得が目指せる。指導者がどの教科のどの場面で習得・活用させるかを見通し,実践していくことが重要になってくる。このような日々の指導者の教材分析・研究と確かな実践が科学的な問題解決力の向上につながり,子どもたちに必要な「生きる力」の育成が実現できよう。 7.2%0.0%100%そう思うだいたいそう思うあまり思わない思わない63.1%0%20%78.7%40%60%80%4.5%25.2%21.3%0.0%

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