001総教CR030517R1研究論文(西村)
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n=52(人)B校第5学年事前・事後テスト4% 続いて,B校第5学年の事前・事後テストの結果を図4-4に示す。 実践前 実践後 52%41%ポイント減少した。一方で,完答と準正答を合わせた割合は実践前後で変化していないが,完答率が実践前に比べ9ポイント減少した。 このようになった要因を分析する上で,設問1に注目した。設問1は簡易検流計の電流の大きさの読取りを問う問題である。これは知識・技能に関わる問題である。B校の子どもたちの設問1の平均正答率は,実践前は72%だったのに対し実践後は57%と減少した。つまり,回路に流れる電流の大きさを簡易検流計から正しく読取ることができない子どもが増加したことになる。このようになった要因として,学習をしてから時間が経過してしまい忘れてしまったことや,実際の授業で操作の意図を理解せずに指導者の指示のまま操作するといった,いわゆる作業的になってしまったこと等による,習得不足等が考えられる。 いずれにせよ,設問2を解答していくにあたり,簡易検流計を正しく読取ることは必須である。簡易検流計を正しく読取れていないということは,誤った情報を基に論証していくことになる。そのため,設問2で論証フレームを活用しながら解答していく際,正しい選択肢(主張)を選べなくなったと考える。 この結果から,ただ論証フレームを示して授業をしていれば科学的な問題解決力が育成されるわけではないことが分かった。主張を支える事実・証拠が正しいものでないと,誤った主張となり,科学的に妥当な解とならないため,正しい事実・証拠を見つけるための様々な知識・技能の習得も必要だと考える。一方で,このような論証確認テストで子どもたちを見取ることで,どこにつまづきがあるか分析することができ,その後の指導に役立てることができる。そのため,このような論証確認テストを行うことは有効だと考える。 *太枠は正答・準正答を示している 図4-4 B校の事前・事後テストの結果 図4-4を見ると,誤答の割合は32%から22%と10・論証フレームがあることで,自分の意見をより説得力のあるものにするためには主張を事実と理由に結び付けて考える必要があることを理解することができた。 ・論証フレームがあることで,事実と理由を区別して書くことができた。 ・論証フレームがあることで班での交流や全体交流も活発になったと思う。ただ,事実と理由の区別が難しく到達目標に達しにくい子ども(以下.C群の子どもたち)にとってはしんどかったようにも思う。 ・対話カードがあることで,話合いがただの発表会で終わらず,批判的な検討をすることができた。 ・形にのっとって,C群の子どもらも司会等をこなすことができた。 ・「自分の主張を事実と理由に結び付けて考える」ことが増えてきた。結論を出すときにも何となく結論を出すのではなく,批判的な検討をしようとする姿勢が出てきた。 ・子どもたちは「複数のデータから」や「前時の実験結果から」などこれまで考えなかった部分に着目す小学校 学習指導法 17 45 第2節 意識調査アンケート結果の変容 実際に授業をした指導者や,授業を受けた子どもたち(A校 第4学年36名,B校 第5学年52名対象)はどのように感じているのだろうか。本節では,指導者と子どもの意識調査の結果から,本研究を分析する。 (1) 研究協力員への質問紙調査から 研究協力校の協力員の先生方に実践後,アンケートを実施した。以下は本研究における手立てについて回答していただいた一部である。 論証フレームや対話カードが論理的に考え,表現したりクリティカル・シンキングを促したりする手立てになったと実感している回答が多くみられる。特に,対話カードはC群の子どもたちにとって有効であり,一人一人の子どもがグループでの話合い活動に参加でき,話合いの活性化につながっている成果として捉えられる。 一方で,論証シートで思考を整理できるのだが,C群の子どもたちについては,「事実・しょうこ」と「理由」を区別して書くことに課題があることが分かる。論証シートを示すだけでなく,指導者は子どもたちに「どのように論証させたい」のかを予め考え,そのために,「どのような問題を提示」するか等といった教材分析をする必要がある。 さらに,実践を通じて感じたことの中には,次のような記述も見られた。 完答主張・事実主張・理由主張・その他主張・無記述誤答20%0%60%40%0%8%4%32%22%0%15%19%4%80%100%

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