流れる水の働き 「天気と情報(2)」では,雲画像の動きを基に三日間の雨量の変化について問うた問題である。「流れる水の働き」では,川の内側と外側の水の流れる速さから川底の様子を問うた問題である。 B校第5学年単元ごとの論証確認テストn=36(人)A校第4学年事前・事後テスト44 *太枠は正答・準正答を示している 図4-1 B校の単元ごとの論証確認テストの結果 *太枠は正答・準正答を示している 図4-3 A校の事前・事後テストの結果 図4-3を見ると,実践前の完答は37%であるのに対し,実践後は46%と9ポイント上昇した。準正答は12ポイント上昇した。合わせた正答率は21ポイント上昇する結果となった。昨年度に実践した第4学年よりも正答・準正答の平均正答率が上昇している(20)。ジョイントプログラム・プレジョイントプログラムや実践前の論証確認テストでは同等の結果だったが,A校の方が昨年度の研究以上に正答・準正答率の上昇が大きかった。先述したことと同様,理科や総合的な学習の時間において発揮・活用する探究的な学習の効果ではないかと考えられる。 小学校 学習指導法 16 <実践前> <実践後> 図4-2 事前・事後テストの記述の変容 図4-2の実践前を見ると,「電流が流れる速さが速い」と書いている。直列つなぎにしたモーターカーが速く走ることから,電流が速く流れてその力がモーターに作用しているといった考えによるものであろう。つまり,簡易検流計で電流の大きさを測っていることに着目できていない。このような記述をしたA児が,実践後には下線部にあるように「電流の大きさ」やそれによる「モーターの回る速さ」の関係を踏まえて記述している。事実・証拠に基づいて論理的に考え,表現することができるようになったと考えられる。こういった変容はA児以外にも見られた。そこで,学級全体で事前・事後テスト正答率の変容について分析した。その事前・事後テストの結果を図4-3に示す。 実践前 実践後 19%n=52(人)100%0%完答主張・事実主張・理由主張・その他主張・無記述誤答天気と情報(2)完答主張・事実主張・理由主張・その他主張・無記述誤答0%20%26%図4-1を見ると,実践が始まった「天気と情報(2)~台風と天気の変化~」では,完答が26%,準正答が11%で合わせた正答率は37%であった。特に正しい主張ができなかった誤答が半数を超えている。このことは,問題に示された図にある事実・証拠を論理的に読み解くことができず,間違った主張をしたことが要因である。 次に,総合的な学習の時間後に行った「流れる水のはたらき」の論証確認テストの結果に注目すると,完答が65%,準正答が8%で合わせた正答率は73%になった。誤答は19%である。 昨年度,筆者は違う学校での第5学年の実践をしている(19)。B校と昨年実践した第5学年では,実践前において本市の小中一貫学習支援プログラムによる学習確認テスト(以下.ジョイントプログラム・プレジョイントプログラム)による平均正答率は同じであった。しかし,最後の単元ごとの論証確認テストでは,B校の完答率が12ポイント,準正答率が8ポイントと昨年度の実践校の正答・準正答率よりも上昇した。様々な要因が考えられるが,その一つとして,総合的な学習の時間で習得した力を発揮・活用したことでより深い習得となり,その後の理科において,さらに高い能力として発揮・活用できたのではないかと考える。 (2)事前・事後テストの結果 本研究の方策が科学的な問題解決力の向上につながったか,事前・事後テストの解答を分析した。問題は2章第1節(1)で例示した,電流のはたらきの問題である。この問題は,「電流の大きさ」と「モーターの回る速さ」の関係から主張していく内容である。この問題について解答したA校第4学年のA児の記述の変容を図4-2に示す。 40%60%0%4%4%11%59%0%65%4%80%8%4%20%40%60%11%37%17%46%29%80%0%9%26%20%3%100%0%3%
元のページ ../index.html#18