001総教CR030517R1研究論文(西村)
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表4-1 論証確認テストの評価基準 *太枠で囲っている部分の「完答」を正答,「主張・事実」を準正答とする。 (1)単元ごとの論証確認テストの結果 解決のための方策を仮説とし,一人一人がポスターセッション形式で主張するようにした。ポスターを作成していくにあたり,提案を主張とし,どのような事実・証拠から提案を考えたかといことで,現状を示させ,どうしてその現状が提案(主張)につながるのか理由を整理させた。そして,取り組んだ結果の見通しを効果として示すことで,提案(主張)をより分かりやすくした。このようにして作成したポスターを図3-6に示す。 図3-6 作成したポスター 図3-6を見ると,左上の現状には1週間の給食の残菜を調べた結果である「事実・しょうこ」が示されている。「理由」には,残菜を燃やすときに二酸化炭素が多く排出されることや,処理するのに費用がかかることを説明している。これらを踏まえて,左下にある提案では「よびかけ」活動により残菜を減らす取組をすることを「主張」している。右下に注目すると,効果にはこの提案の方策を実行した際の結果の見通しが示されている。 このようにできたのは,思考を整理し,提案を主張していく際に,どの事実や証拠から考えたのか,またどうして主張が言い切れるか理由を書くように示したことが要因であると考えられる。実際の発表では,質疑応答の時間も設けたことで,それぞれの主張に対し,「本当に効果があるのでしょうか。」や「私たちにできることですか。」等といった質問をする様子も見られた。 その後の熟成課題の過程で,ポスターセッションを受けて,実際に自分たちで考えた取組を実践できるようにした。各クラスで取組むことを決め,その後,仮説が有効であったかを実践した事実を基に論理的に考え,表現するようにした。例えば,図3-6の提案について取組んだグループでは,「呼びかけることで残菜が減った。」や「呼びかけにより意識している様子があった。」「私たちも意識して食べ残しがないように行動することができた。」 (18)文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編」 (株)東洋館出版社 2018.2.28 等の事実や証拠を示し,効果があったと結論づけた。一方で,「本当に二酸化炭素が減ったのか分からない。」や「クラスだけの取組だけでは限界がある。」等,クリティカル・シンキングを働かせた意見も出され,これらの質問に答えるためには,「より多くの人に実行してもらうプランを考えよう」や「水分のあるものがどれだけ燃えにくいかを明らかにして伝えよう」等と表現課題に向かうことができた。 以上のように,論証フレームを意識した指導により,子どもたちが論理的に考え,表現することができた。また,思考を整理し可視化したことで,「本当に効果があったのか」等のクリティカル・シンキングを働かせる手立てにもなった。これらの取組により,第2章第2節で示した総合的な学習の時間の単元構想をスムーズに展開することにもつながったと考える。 解答に対しての評価基準は表4-1である。 表4-1の基準に従い単元ごとの論証確認テストを分析した結果を図4-1に示す。図4-1の結果はB校第5学年の結果である。単元や数値は多少違うが,A校第4学年も同様の傾向が見られた。 第4章 研究実践の成果と今後 第1節 論証確認テストから 科学的な問題解決力が本研究の方策により育成されたかを論証確認テストで調査した。 評価区分 完答 主張・事実 主張・理由 主張・その他 主張・無記述 誤答 小学校 学習指導法 15 評価基準 事実・証拠に理由を加え正しい主張ができている。 事実・証拠に基づいて正しい主張ができている。(理由は不明瞭) 事実・証拠は不明瞭であるが,理由と正しい主張ができている。 正しい主張ができているが,事実・証拠や理由が不明瞭。 正しい主張ができているが,事実・証拠や理由が無記述。 正しい主張ができていない。 43

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