40 A児 B児 図3-4 骨の役目についての子どもの記述 ないが,「事実・しょうこ」や「理由」「主張」が文章中のどれにあたるか線を引いて整理している様子が分かる。特に,A児のように作図して考察している子どもが半数以上いた。 これらのことから,指導者が意図的に論証フレームを示し継続的に指導してきたことで,論証フレームを理解し,習得し活用している子どももいることが分かる。 (2)クリティカル・シンキングを働かせた学習 ~B校 第5学年「天気と情報(2)台風と天気の変化(全3時間)」における実験から~ ア.学習のねらいや手立て 本単元は「A生命・地球」に位置付けられ「地球の大気と水の循環」に関わる内容である。ここでは,天気の変化は雲の量や動きに関係し,映像などの気象情報を用いて予想できることを理解していく。子どもたちは,1学期の学習で,春頃の日本付近の雲は,西の方から東へ動いていく特徴があり,それに伴い天気も西から東へ変化していくことを学習している。 そこで,導入では福岡の西にある台風の雲画像を提示し,翌日や翌々日の天気を予想させた。多くの子どもは,雲は西から東へ動くことから翌日や翌々日はくもりや雨になると予想した。しかし,実際にはその後,晴れの日が続いた事実を示し,小学校 学習指導法 12 「台風はどのように動くのだろうか。また,台風の動きによって天気はどのようにかわるのだろうか。」と学習問題を設定した。 本時は2/3Hで,学習問題を受けて,台風の数日間の天気図をもとに,台風の動きの特徴を見出し,天気の変化の仕方を理解する学習である。クリティカル・シンキングを促す対話的な学びに向けて,三つの手立てを講じた。 一つ目は,対話カードの提示である。対話カードを提示し,役割を決めて話合いをすることで,ただ考察を報告する話合いでなく,質問するなどを通してクリティカル・シンキングを促す対話的な学びが実現できると考えた。 二つ目は,論証フレームの活用である。論証フレームに思考を整理することで,相手の事実・証拠や理由,主張が明確になり,理解しやすくなる。そのため,自分の意見と比較しやすくなり「本当にそうか。」や「言い切れるのだろうか。」といったクリティカル・シンキングを促すことになる。 三つ目は,与えるデータ数を選択させることである。各グループに台風の天気図を8種類配布し,それを基に台風の動きの特徴を見出していく。全く同じ動きをする台風は無いため,いくつかのデータ数を合わせて考えていかなくてはならない。どれくらいデータがあると傾向として言えそうかを個人の裁量にゆだねることで,考察していく際,クリティカル・シンキングが働くと考える。 イ.授業の実際と子どもの様子 台風の天気図を調べ,各自で考察した後,実際にグループで立場を決めて話合っている時の会話を以下に示す。 T:話合って,グループとしての結論を出しましょう。 C1:では,台風の時の天気は,どのように変わるかを話合います。発表者の人は自分の考えを言ってください。 C2:私は令和元年8月と平成30年9月の天気図を見て,台風のときの天気は南から北に変わると思います。なぜかというと,どちらも台風は南から北に動いているからです。 C1:C3さんはどうですか。 C3:私は天気は南から北へ変わると思います。事実やしょうこは平成30年9月と平成29年9月の天気図を調べました。そこから,台風が沖縄の方から北海道の方に南から北に動いているから,天気も南から北に変わ
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