と発言した。言語化したものを板書し,「事実・しょうこ」のフラッシュカードを貼ることで,何を事実・証拠とするかを明確化した。その後,「主張」は問いに対する自分の結論,「理由」は「事実・しょうこ」からどうして「主張」が言えるかを考えて書くように指示し,各自で考察するようにした。その時の様子を図3-2に示す。 図3-2にあるように「事実・しょうこ」や「理 由」「主張」について共有した後,各自で考え記述するようにした。その記述例が図3-3である。 図3-3のように,「事実・しょうこ」には共有した結果を書いている。そして,「とじこめた水に力を加えると,水の体積は変わらない」と学習問題に対し,自分の結論である「主張」が書かれている。その「理由」として,「水は縮まない」や「空気と水の原理はちがう」とある。論証フレームを活用することで思考を整理している様子が伺える。 加えて,「空気と水の原理はちがう」という記述に着目すると,これまでに学習した空気の性質を想起し,知識を活用して比較していることが分かる。このことは,まさに教科の枠組みの中で探究的な学習をしていると考えられる。また,「原理はちがう」というのは,空気と水では性質が異なるといった質的な見方を働かせている様子が伺え小学校 学習指導法 11 る。論証フレームを活用することで思考の整理だけでなく,「見方・考え方」を活用するといった深い学びにもつながっていると考える。 一方で,論証フレームを示したことで思考が整理され,論理的に考え,表現しているが,自らの意思で行ってはいない子どもたちが,自らの意思で論証フレームを使い,論理的に考え,表現できるように繰り返し指導していくことが大切である。 <よりよい習得に向けて> 導入期で論証フレームの使い方を理解したと考えられるため,より確実な習得に向け「わたしたちの体のつくりと運動」の単元の中で繰り返し使っていくようにした。本単元は,「B 生命・地球」に位置付けられ,「生物の構造と機能」に関わる内容である。人や動物の体には骨や筋肉があることや,それらの働きで体を動かすことがきることを学習する。 本単元の中でも論証フレームを繰り返し使うようにした。例えば,2/9Hでは論証フレームを使って手や腕の骨のつくりについて子どもたちの予想図を基にどの予想が正しいかを話合ったり,3/9Hで指導者が示した図の中から,腕を曲げた時の筋肉の様子に合っていると考えられる図を論証フレームを使って予想させたりした。繰り返し指導していくことで,子どもたちは考えを主張する際に論証フレームを自然と使っていくことができるようになった。 そこで,5/9Hで全身の骨を調べて,それぞれの骨の役目を考える際,論証フレームを示さずに考察する場面を設定した。実際の授業では,「人の体の中には,どこに,どんな骨があるのだろう。また,それぞれどんな役目があるのだろう。」と学習問題を設定し,全身の骨格標本をもとに,全身の骨の形や大きさ等について調べた。その後,大きさや形が違う事には意味があることを伝え,それぞれの骨にはどんな役目があるかを考察させた。 考察に入ると,すぐに子どもたちは「考察を書く時に『事実・しょうこ』や『理由』等を書いてもいいですか。」と質問してきた。指導者は「必要なら使っていいよ。」と返答した。この子どもたちの質問から,多くの子どもたちが論証フレームを意識していると考えられる。また,この考察の場面における子どもの記述を次頁図3-4に示す。 次頁図3-4のA児を見ると,子どもが自ら論証フレームを作図し,思考を整理している様子が分かる。また,B児は論証フレームを作成はしてい 39 図3-2 論証フレームを明確化している様子 図3-3 論証フレームの記述
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