001総教CR030517R1研究論文(中澤)
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(1) 話合いスキル獲得に向けて 10 ・新しい考えをつくる ・意見をあわせる ・優先順位を決める ・条件をつける ・少しずつ全部行う ・共感的に理解し,譲る ・多数決を行う 際には,言葉や図を使って可視化していくことが有効であると考える。個々の意見を可視化し整理する中で,違う意見だと考えていた意見の共通点を見つけることができたり,また個々の意見を共有することで,自分の存在価値が高くなり,参加意識が高まったりすると考えるためである。そこで,黒板はもちろんだが,ホワイトボードや付箋,模造紙などを活用していくことが有効である。このように図などを使い可視化するためには,出た意見を聞きとりながら短くまとめること,そしてまとめたことを分かりやすく書くことなどのスキルが必要になる。 これらの質問するスキル,それに的確に答えるスキルや整理し分類するスキルは,急に身に付くものではないので,他教科の学びを生かしたり,話合い活動の中で経験したりしながら学んでいくことが大切である。 ③ まとめる(決める) 話合い活動では,あらかじめ議題や話合いのめあて等が決まっているため,それが意見をまとめる視点となる。では,最終的にどのようにして合意点を探っていけばよいのだろうか。 国立教育政策研究所教育課程研究センターでは,合意点を見つけるためのプロセスの例として以下の例を挙げている。(13) これらは,例であり教員側が理解しておくことで,場に応じて提案することができると考える。また,児童が話合いを進める中で新たな合意形成の方法を見つけていき,見つけた方法を学級全体で共有することで少しずつ身に付けていくことができると考える。 どのステップにおいても大切なことは,相手の立場に立って共感的に理解することであると考える。共感的理解を意識的に行えるよう,それを行った際には,教員がすかさず褒めていくことで価値付けしていくことや,道徳科等の学びを生かしていくことなどが有効である。 もちろん,合意形成をすればそれで終わりというわけではなく,決まったことを実践することも大切である。本当に全員が納得したものであれば,児童はやる気をもって実践することができるだろう。また,話合い活動の中でそれぞれの思いを伝え合う小学校 特別活動 6 経験が,相互理解につながり,それが実践で児童同士の関わりを良好にすると考える。 第2節 効果的に人間関係形成能力を育成するた前節では,合意形成を目指す話合い活動のそれぞれのステップの中で,必要となるスキルについて述べた。それをまとめると以下の通りである。 ①出し合う ②くらべ合う ○詳しく知りたいことを質問する ③まとめる(決める) ●いろいろな合意形成の方法を知り活用する ●合意点を見つけ,意見をまとめる これらのスキルの中には合意形成を目指す話合いの中だけではなく,それ以外の学習の中でも習得することも可能なものがあると考える。上記の○が主にそれにあたる。●の部分は,合意形成を目指す話合い活動の中で学んでいく場合が多いものである。前者については,どの学習においても必要となるスキルであるので,国語科はもちろんであるがその他教科等の学習の中で教員が意識しながら段階的に学べるようにしていくことが必要である。 そこで,児童の実態から,習得することが必要なスキルを取り上げ,どの教科等の学びを生かせるのか事前に計画することが必要だと考える。本研究においても,研究協力校の児童の実態に応じ,計画を立てて実践を行う。その計画については,第3章で述べていく。また,各教科等での学習のみではなく,朝の会のスピーチの時間を活用していくことも,スキルアップにつながると考えるため,計画しながら取り組んでいく。例えば,ペアトークやグループトークを行い,話すことへの抵抗を減らしたり,聞いたことを受けて質問したりする等である。これらの学びは,合意形成を目指す話合い活動に向けてのスキルアップのみではなく,その他の教科等にも生かすことができると考える。 ○自分の思いを伝える ○相手の意見を最後まで聞く ○質問に的確に答える ○聞き取った意見を短くまとめ,可視化する ○出た意見の共通点や相違点などに着目し分類する めの手立て

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