001総教CR030517R1研究論文(中澤)
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①互いの意見を理解し合う (相手の立場に立って共感的に理解する) ②何が違うのかを明確にする (理由を明確にして比較する) ③見方を変える (視点を変えて比較する) 中でも,相手の立場に立って理解するということは,合意形成においてとても重要であり,人間関係形成能力の育成につながると考え意識し取り組んでいく。 ① 出し合う 合意形成を目指すのであれば,まず議題に対し自分はどうしたいのかという意見を参加者の全員がもち,出し合うことが必要不可欠である。それにより,参加意識を持ちながら話合い活動に参加することができるようになるためである。しかしながら,アの場,グループの場など組み合わせていくとより効果が上がると考える。 さらには,話し合うグループの人間関係が話合いを大きく左右すると考える。そのため,児童の実態や重点的に育成を目指す資質・能力に応じてグループ編成等も配慮するのか,あえてしないのか等計画していくことが有効であると考える。 〇目的の共有 話合い活動を進める際,なぜそれをする必要があるのか,どんなことを話し合うのか等を児童が共有することが必要である。共有することで,話し合う方向性が定まり,合意形成しやすくなるだろう。また,それが話し合う視点となり,その視点にそって最終的な決定をすることでみんなが納得する決定につながると考える。 (2)合意形成を目指す話合いのプロセス 合意形成を目指す話合いは,どのようなプロセスで進めるとよいのだろうか。国立教育政策研究所教育課程研究センターの「みんなで,よりよい学級・学校生活をつくる特別活動」(11)では,学級会の基本的な話合いの流れとして,「出し合う」「くらべ合う」「まとめる(決める)」とし,「このような流れを基本に学級として折り合いをつけて意見をまとめたり,合意形成を図ったり」することが述べられている。これは学級会の話合いの流れとして示されたものではあるが,合意形成を目指す話合いであれば同様のプロセスであると考え活用していく。 児童が納得し,合意形成に向かうためには,参加者全員が,意見を出し合い,十分に情報を収集しながら,整理・分類していくことが大切である。前述のように,「合意形成を目指す話合いそのものを段階的に学ぶこと」も必要であるため,児童の実態に応じてそれぞれのプロセスで必要なスキルの習得を目指すことができるようにしていく。 では,どのようなスキルを習得していくことが必要なのか,またどのように習得していくのかを各々のプロセスに分けて考えていく。 小学校 特別活動 5 9 実際に活動の中で全員が意見をもち,それを出し合い決めていくということは容易ではない。時間的な制約,児童の実態等様々な要因が考えられる。そこで,活動の前に児童がそれぞれ自分の意見をもち書き留めておく等の時間を取り,個々が自分の考えを整理し,自信をもって発言できるようにしていくことが解決策の一つだと考える。また,意見を出し合う際,全員が発言できるよう話し合う人数を実態に応じて変える等も効果的だと考える。 ② くらべ合う 意見に多様性が出れば,対立が起こることもある。その原因の多くは,それぞれ視野が狭くなり,自分の意見こそが正しい,普通であると思っていることである。それぞれの意見の背景にある関心事や懸念していることなどを探り,それを整理してお互いの一致点を探ることが必要だと考える。それが,「くらべ合う」ステップである。 国立教育政策研究所教育課程研究センターでは,意見を比較する際の視点を以下のように述べている(12)。 合意形成を実現するためには,「出し合う」際に出た個々の意見に対し疑問に思うことを質問するスキルや,それに的確に答えるスキルが必要である。ここでの質問を中途半端にしないことが,見せかけの合意にならないために大切だと考える。つまり,質問し合い,それに答え合う中で,それぞれが思っていることをこの段階で吐き出し合い,スッキリし合った状態で整理していくことで,みんなが納得することにつながると考える。また,質問し合うことにより,意見を出し合う段階では見えてこなかった個々の意見の本質に迫ることができ,合意点を探ることにつながると考える。 「くらべ合う」では,個々が出した意見の共通点や相違点を見つけ,それを整理・分類し,よりよい意見を探っていくプロセスも大切である。その

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