表4-9 それぞれの役割で工夫していること それ以外 一重下線は主に前者の「相互理解が深まり協力していこうという気持ちを育むこと」,二重下線は後者の「傾聴する姿勢や多様性を受け入れる寛容さ」が表れていると考えるものである。一重下線のように,それぞれの役割を担う中で相手意識を持っている様子が伺える。また,二重下線ではみんなの表情を見ながらしっかり話を聞こうという姿やいろいろな意見を大切にしていこうという姿が見取れる。また,輪番で行う中で,進行役の苦手な児童が進行役になった際に,得意な児童や経験のある児童が支援する姿が見られた。これらから,役割を輪番で行う経験は有効であったと言えるだろう。ただし,グループの人間関係が輪番制の有効性を左右することが考えられたので,児童の実態に応じ,教員側でグループ編成をし,実践を行ったことも要因だったと考える。 第3節 生徒指導の3機能を活用して このような合意形成の方法を身に付けておくことで,何かを決める際に活用することができ,良好な人間関係を築く手助けとなるだろう。 次に,場面リーダー輪番制が,前述の「相互理解が深まり協力していこうという気持ち」を育むことや,「傾聴する姿勢や多様性を受け入れる寛容さ」を育むことにつながったか検証していく。 表4-9は,児童が話合いの進行役,書記,それ以外の役割を担う中で気を付けていること,工夫していることを記入したものである。 第2章第3節(1)では,合意形成を目指す話合い活動において生徒指導の3機能を生かしていくことが有効であると述べた。実際に実践の中で,担任教員がどのように3機能の視点を意識して指導を行ったのか,またそれが児童にどのように作用していたのか実践の中からいくつか紹介する。 〇自己決定の場を与える ・一人で考える時間をとる 話合い活動の際には,一人で考える時間を確保し,その際に担任教員が机間巡視し個別指導を行ったり,事前にワークシート等にコメントを加えたりし,全員が自信をもって自分の意見を言えるようにした。図4-2は,個別指導を行っている様子である。 図のように児童と同じ目線で話をすることで,児童の思いをしっかりくみ取ることが可能になり,児童が自信をもって発言する姿が見られた。 また,自分でしっかり考えられるように促す担任教員と児童のやりとりが以下の通りである。 このように自分の意見を持つことが習慣づいていた児童の発言や一生懸命考えていた児童のよさをすかさず認めることで,児童がその大切さをより認識することにつながっていたと考える。 〇自己存在感を与える ・考えた意見を全ての児童が発言できる場をつくる 全員が意見を持つことができたら,それらを必ず伝えられる場を作ることが大切である。その際,話し合う人数の工夫が必要になる。学級会の際にも,全てを学級全体で話し合うのみではなく,途中にグループでの話合いを入れることで,全員が自分の思いを伝える場を確保した。そして,グループで話し合ったことを全体の場で伝えられるようにした。図4-3,4-4はその様子である。 T :話合いをするときにまずは何をすることが大切やった。 S2:自分はどちらなのテーマがよいのか考えて書いておく。 T :S2さん正解。自分はどちらのテーマにしたS2:えー。まようなあ。 T :S2さん今のつぶやき最高。迷ったらいい。迷うってことはそれだけしっかり考えているってことやしなあ。 図4-3は,学級会の中のグループでの話合いを行った様子で,図4-4は,話合い後に全体の場で伝 いのか,理由も考えて書きましょう。 ―中略- 25 図4-2 一人で考える時間の個別指導の様子 小学校 特別活動 21 書記進行役 みんなが平等になるような話し方で,こっちによせるとかあっちによせるとかをなくすようにしている 見る人が見やすいようにスペースをつくるようにしている みんなが分かりやすいようにきれいに字を書いて,字をくっつけすぎない みんながどのような顔をしてるのか見ている 1つの意見だけを見るのではなくみんなの意見を見てまとめる 早く丁寧に分かりやすく 書記などが書けるスピードで話をしたり,人の話をよく聞いたりしている 自分の言いたいことをきちんと言って,伝わるようにしている 勝手にしゃべらずしっかりと進行役の話を聞く
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