001総教CR030517R1研究論文(中澤)
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第2章第2節で,効果的に人間関係形成能力を育成するための手立てを「1.話合いスキル獲得」に向けた手立て「2.教科横断的な視点の導入」の一つを挙げた。それらが有効であったか検証していくが,「1.話合いスキル獲得」に向けた手立ては,本研究の目的がスキルの獲得ではなく,獲得したスキルを元に人間関係形成能力育成につなげていったので,ここでは省く。 24 苦手意識のある児童が自信をもって思いを言えるようにするためには,もっと個別指導を行ったり,話し合うのは楽しいと思えるようなテーマを選んだりする工夫が必要だったのかもしれない。 ●の二つの意見は,児童の葛藤のチャンスであり,うまく活用すれば,人間関係形成能力育成につながるものだろう。このような意見を見つけたときに,解決の糸口を見つけていくことで,この2人の意見も変容していくと考えられる。 課題はあったものの,児童の人間関係形成能力を育成していく上で,合意形成を目指す話合い活動を取り入れていくことは有効であったと考える。しかし,単に取り入れるというものではなく,実践の中で,研究協力員の方々が行っていたように,児童の実態に応じた支援を行ったり,時には粘り強く児童の葛藤を見守ったりしながら,児童の力で合意形成できるようにすることが重要であったと考える。そのために本研究で取り入れた手立ての有効性については,次節で検証していく。 第2節 手立ての有効性について 第3章第1節で述べたように,教科横断的な視点を導入するために,全ての実践に共通する手立てを用いた。それらを,「教員が意識的につなげていけるようにするもの」と,「児童がつながりを意識できるようにするためのもの」に分けて活用した。 〇教員が意識的につなげていくための手立てを活用して 教員が意識的につなげていくために,「話合い計画・振返りシートへの記入」を手立てとして活用した。その有効性について検証していく。 実践においては,話合い活動の前に担任教員と相談しながら話合いの計画を立てて実践を行った。教科等を越え,前回の振返りを生かして次の計画を立てていくことで,「前回の総合的な学習の時間の話合いでは,〇〇ができるようになりましたね。小学校 特別活動 20 今回の学級会ではそれを生かして・・・」といったそれぞれの話合い活動をつなげていく担任教員の発言が増えてきた。計画シートを活用することで,前回の活動で記入した振返りを元に改善して,合意形成させたいこと,話し合う方法等を具体的に考えることができた。 しかし,育みたい資質・能力については,話合い活動に即した言葉で具体的に表しておく方が意識しやすかったと考える。学校の実態に応じ,シートを改善しながら取り組むことで有効であると言えるだろう。 〇児童がつながりを意識できるようにするための手立てを活用して 児童がつながりを意識できるようにするための手立てとして,「児童用話合い振返りシート」「合意形成の方法の共有(掲示物)」「場面リーダー輪番制」の三つを活用した。それぞれの有効性について検証していく。 「児童用話合い振返りシート」については,児童がつながりを意識するために活用していたが,実践を行う中で,教員が児童の振返りを見て,関わりのきっかけにしたり,次の活動の改善にしたりするのに有効であった。 教員が「決まったことに納得したかどうか」の回答を知ることで,納得のいかなかった児童に対する声かけを行うことができた。また,児童の「話合いをして思ったこと・考えたこと」の記入より,児童のがんばりを見つけることができ,それを認めるよい機会となった。 「合意形成の方法の共有(掲示物)」については,児童にとってだけではなく,教員にとっても活動の「つながり」を意識するために有効であったと考える。話合い活動の中で,前回までに共有した方法を生かす児童の姿がたくさん見られた。児童が意識できるようになったのは,教員が意識し声をかけ続けたことが要因だと考える。 また,協力員の方からのお話では,「掲示しておくことで,学級活動や総合的な学習の時間だけではなく,他の時間にも生かしてみようと思うことが増えてきた」といった意見があった。実際に体育のグループでの話合いでも,この視点を取り入れて学習に取り組まれている姿もあった。 また,子どもたちの中からも自然と,「それ合体してみたら」や「理由を聞いてみたら納得するんじゃない」と普段の生活の中や児童同士のトラブルの際にも活用する姿が見られるようになった。

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