図4-1 1人で考えるより,みんなで考えるほうがよい 意見が出ると思う(B校) 実践前後で「あてはまる」と答えた児童が2倍に増えた。また,実践後は否定的な回答をした児童がいなくなった。児童の記述においても,「みんなで話し合うといい意見が出る」や「みんなの意見を聞いてなるほどと思う」とあった。これらの思いが,進んで人と関わり,よりよい人間関係を築くことにつながると考える。 〇みんなの前で発表するのが苦手だから 〇自分の意見があまり言えないから 〇グループはいいけど全体はちょっと発表しに ●自分の意見を言っても違う意見になるから ●話合いの時はうまくいっても,決まったこと 〇の三つは,何度か話合い活動を体験してもなお発表することに対する苦手意識が拭えなかったと言えるだろう。しかし,この結果より,児童にとって自分の意見を言えることが,話合いを楽しいと感じるための重要な要素であったことが分かる。 それぞれの役割の中でどのような工夫を行っているかという記述に,「みんなでよりよく話し合えるように賛成や反対をしっかり聞いている(進行役のとき)」「意味をちゃんと理解して書くようにしている(書記のとき)」「みんなの意見をしっかり聞いて自分の意見もしっかり発表する(進行役・書記以外のとき)」を挙げている児童がいた。聞くことの大切さを学び実践していた結果だと考えられる。 表4-7は,「みんなでなにかをするとき,友達のよいところを見つけることができる」かという問いに対する児童の回答である。 みんなでなにかをすると き,友達のよいところを見つけることができる 実践後には,否定的な回答をした児童がいなくなった。合意形成を目指す話合い活動の中で,少数意見を排除するのではなく,生かしていこうとする姿が見られるようになった。学級会においても,最初2人しか賛成がなかった意見が最終的に採用されたことがあり,児童の感想に「2人のみの意見が通ると思わなかった」と驚いている様子があった。さらに,朝のスピーチでペアトークのテーマを「お互いのよいところについて語ろう」というものを取り入れ,児童が個々のよさに注目するようになったことも要因だと考えられる。 一方,実践前後で否定的な意見が増えた項目もあった。表4-8は,「集団をまとめる役割(リーダー)をしてもよいと思う」という項目の児童の回答である。 集団をまとめる役割(リー ダー)をしてもよいと思う 実践後,「あてはまる」「まあまああてはまる」といった肯定的な回答をした児童が25%減った。今までは,進行役等を決まった児童が行うことが多かったが,輪番で行ったことにより,個々がその難しさを痛感したことが要因の一つだと考えられる。しかし,その中でも「みんなの意見をまとめるのがむずかしかったけど,できたからよかっ小学校 特別活動 19 た」と,達成感を感じる児童もいた。 また,この実践を通し,児童は集団で話し合うことのよさに気付いていたのかどうかを知るために「1人で考えるより,みんなで考える方がよい意見がでると思う」かどうかの調査を行った。図4-1は,実践前後のB校児童の回答である。 これらの調査結果より,研究仮説の有効性はある程度実証されたと言えるだろう。しかし,課題もあった。実践後に「総合的な学習の時間や学級活動での話合い活動は楽しいですか」という問いに対し,A校では2人,B校では3人の児童が「あまり楽しくない」や「楽しくない」といった否定的な回答をした。その理由を尋ねると,以下のような回答があった。 くいから をするときに喧嘩になることがあるから 23 表4-7みんなでなにかをするとき,友達のよいところを見つけることができる(B校) 表4-8 集団をまとめる役割(リーダー)をしてもよい と思う(B校) ④互いのよさや可能性を生かす力 n=16前半後半⑤集団を調整する力(リーダーシップ力) n=16前半後半43.8%56.3%43.8%43.8%12.5%0.0%43.8%25.0%12.5%31.3%25.0%18.8%あまりあてはまらないまぁまぁあてはまるあてはまるあまりあてはまらないあてはまるまぁまぁあてはまるあてはまらないあてはまらない18.8%25.0%0.0%0.0%
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