表4-2 自分の思いを学級全体の場でつたえることがで 自分の思いを学級全体の 場で伝えることができる 第1節 調査結果と分析 それを根拠に話し合うことができるようにすることが必要だと考えた。 そこで,学級のよさや課題についてのアンケートをとり,児童の意見から出てきた課題を解決するための取組について話し合った。児童から出てきた「ルールが守れない」「言葉遣いがよくない」「間違った行動に対して注意しあえない」といった課題を解決するために,終わった後に,「みんなで課題を解決できる一歩になったな」と思えるようなみんな遊びを考えて実践することが効果的だと話合いで決まり,学級会の議題とした。 学級会では,みんなで遊ぶ遊びを二つ決めることになった。最初は数人による,これまでと同様の自分がしたい遊びのものの主張にとどまった。そこで,幾度となく担任教員が「本当にみんなはこのままで納得するのかな。」と問いかけた。すると,進行役が議題に返るよう促したり,周りの人と話をする時間をとったり工夫する姿が見られた。そのため,今までは自分の思いが言えなかった児童の何人かが勇気をもって,このままではみんなが楽しめないのではないかといった趣旨の発言をした。その意見を受けて,「今までと同じ遊びでも工夫を加えていけばうまくいくのではないか」といった意見が出て,出てきた遊びに工夫を付け加え話合いを終えた。 決めたことを実践する際は,みんなで楽しんでいこうとする児童同士のよい声かけがたくさんあった。そのため活動後の振返りで,「自分は楽しむことができたか」という問いに対し全員が肯定的な意見をした。そして,自由記述には以下のようなものがあった。 このように,みんなが合意形成したことに納得していれば,それを実践の際に生かしていこうという姿が見られるということが分かった。これらが可能になったのは,合意形成を目指す話合いの議題「学級の課題を解決する」ということが全員の腑に落ち,解決のために個々が勇気を持って自分の思いを伝えたためだろう。そして,その頑張りを認め,必要な時には支援をした担任教員の姿があったからだと考えられる。このように話合い・試合に負けても切り替えたり,ルールを一人一人が守ったりすることによって,みんなで楽しく遊べたし,少し学級の課題解決につながったと思った。 ・みんな楽しく課題をなくそうという気持ちがあったから楽しかった。 小学校 特別活動 17 活動で自分たちの思いを伝え合い,時にはぶつかり合って葛藤しながらも,よりよい学級を目指していく取組は,人間関係形成能力育成のために有効であったと考える。 本研究の研究仮説を検証していくために,育成を目指していた人間関係形成能力が,この実践を通し身に付いたかどうかについての調査を行った。第1章第1節(2)で示した,本研究で目指す人間関係形成能力の具体6項目に対応するような質問項目を作成し,実践前後で調査を行った。具体的な資質・能力と,質問項目は表4-1のとおりである。 表4-1 人間関係形成能力に対応させた質問項目 知識技能 思考力 判断力 表現力等 学びに向かう力 人間性等これらの質問項目を,「あてはまる」「まあまああてはまる」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の四つから一つを選択する調査を行った。第1節ではこれらの結果から,それぞれの協力校に分けて分析していく。 (1)A校での調査結果と分析 A校は,34名全児童からすべての問いに対し回答を得た。実践前と比べ,すべての質問項目で肯定的な回答をした児童が増えた。 表4-2は,「自分の思いを学級全体の場で伝えることができる」という項目に対する児童の回答である。 21 第4章 実践から見えてきたこと きる(A校) 3つの柱具体的な資質能力自分の思いを学級全体の場で伝えることができる自分の思いをグループ(3~5人くらい)の場で伝えることができる①自分の思いを伝える力友達の意見を最後まできくことができる②相手の意見を聴く力③お互いの考えや立場を 理解し尊重する力④互いのよさや可能性を 生かす力⑤集団を調整する力 (リーダーシップ力)自分とはちがう意見があることが分かるみんなでなにかをするとき,友達のよいところを見つけることができる集団をまとめる役割(リーダー)をしてもよいと思う自分から進んで友達に声をかけることができる⑥進んでよりよい人間関係 を築こうとする力あてはまるあてはまる①自分の思いを伝える力 n=34実践前実践後29.4%42.4%38.2%45.5%29.4%12.1%質問項目あまりあてはまらないまぁまぁあてはまらない2.9%0.0%
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