001総教CR030517R1研究論文(中澤)
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小学校 特別活動 15 でも最終決定に反映することができ,児童にとって受け入れやすく,折り合いがつけやすかった。そこで,6回目の話合い活動では,二つのテーマからどちらかを選ぶといった今までとは違う形式の話合い活動を取り入れた。つまり,この話合いでは,今までの話合いのように,いろいろな意見を合体したり,付け足したりすることができるものではなく,二つから必ず一つを選ばなければならないというものである。このように,話合いで必ず一つを選択して決めなければならないといった機会は,これからも必ず遭遇するものなので,このような場面に遭遇した際,どのように合意形成していくかを学ぶことができるよい機会になると考え取り組んだ。 実践では,たまたま全員の意見が一致したグループ,譲り合いながら決めたグループなどがあったが,結局意見をまとめることができなかったグループが一つあった。以下はその話合いの中で児童が葛藤する様子の一部である。このグループは,D・E・F児の3人で,話合いの中での意見は,D・E児が同一で,F児が違う意見だった。 D児 :まとまらへん。 (グループの話合い中,机間巡視する先生に)T :一つに決められそう。 E児 : (合意形成の掲示物を指さしながら) 今までの方法どれも使えへんし,どう して決めたらいいか分からん。 T :ほんまやなあ。どうしたらみんな納得D児 :多数決やったらすぐ決まるやん。多数EF児:・・・。(話合いが途切れる) このように,合意形成を行うために,今まで学習した方法を使おうとした。けれども,どれも当てはまらないことに気付き,時間切れとなって最終的には,F児の意見に決めていた。 最後に,どのような方法で合意形成を行ったかを学級全体で共有した。以下はその様子である。 T:前回までのまとめ方では決められなかったことに気付いた人がいましたね。今回は新たにどんな決め方が出てきた。 S1:譲る。 S2:でも「譲る」やったら多数決みたいやし,相手の気持ちを聞いて納得して譲った。 T:なるほど,いいところや互いの考えを考慮した上で譲るというパターンですね。 できるやろなあ。 決やったらあかんの。 19 司会進行や書記に慣れてきた。さらに,グループでの話合いの仕方が児童に定着し,総合的な学習の時間のみではなく,学級で行う様々な話合いの際に,出し合う-くらべ合う-まとめるといった話合いのプロセスを自然と活用する姿が見られた。 このように,児童にある程度話合いのスキルが定着すると次は,人間関係形成能力育成に重点を置いて実践を行った。 第3節 人間関係形成能力育成重点期の実践内容 人間関係形成能力を育成する上で大切なことは,児童同士の話合いが必ずしもスムーズに進むことではなく,様々な意見の中で児童が葛藤しながらなんとか合意形成を行っていくような場面がたくさんあることだと考える。B校の実践において,人間関係形成能力育成に向け,そのような場面を取り入れた実践を二つ取り上げ,その様子を述べる。 (1)二つから一つを選ぶ課題を取り入れた実践 総合的な学習の時間「『戦争の時代に生きた人々』『障害のある人々』のどちらをテーマに学習を進めていくか話し合おう」 B校においても,A校同様,実践の前半は話合いスキルアップに重点を置きながら合意形成を目指す話合い活動を行った。話合い活動を行う中で,児童から以下のような振返りが出た。 ・多数決では1人が嫌な気持ちになるけど,意見 を出し合ったら納得できることが分かった。 ・たくさんのまとめ方があるなと思った。 ・理由を言うことも話合いに大切なことが分か り,全員が納得できたのでよかった。 このように,多数決やじゃんけん等に頼らず,みんなで話合いながら合意形成することのよさに気付く児童が多く,共有した合意形成の方法を次回に生かす姿が見られるようになった。実践が始まって6回目の話合い活動までに,児童から出てきた合意形成の方法は以下の通りである。 ・合体する ・一つの意見に付けたす ・みんなの意見のいいところを取り上げる ・理由から共通点を見つけてまとめる これらの方法を活用すると,個々の思いを少し~B校の実践より~

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