この調査は有識者会議が行われてすぐの2016年8月~9月に行われたものである。「全く知らない」「知っていたが内容はよくわからない」を合わせると全体の9割であり,そもそも十分認知されていなかったことがわかる。有識者会議の議論が始まったころからメディアで報じられるようになったが,遠巻きに見ている教員が多いというのが実態ではないだろうか。また本市においては令和元年度,プログラミング教育に関する研修が行われたが,全教員に周知,理解されるにはまだまだ時間がかかるであろう。 しかしながら,小学校においては先述した学習指導要領総則にある通り(p.3),各教科等の特性を生かし,教科横断的な視点から教育課程の編成を図るものとされている。プログラミング的思考のような○○思考は,一回の授業で身に付くものではない。6年間を通して,様々な教科の中で継続的に育んでいく必要がある。教員がプログラミング的思考の要素を意識して教材研究と授業を行えるようになるためには,プログラミング的思考を意識することができる授業デザインシートが必要ではないだろうか。 (2)授業デザインシート プログラミング的思考を教員が意識できるよう,その要素をわかりやすく端的に示した授業デザインシートを作成した。それを図2-2に示す。 図2-2 授業デザインシート 授業デザインシートの左側には,プログラミング的思考の5要素が示してある。例えば分解については,「問題や事象を小さい部分に分ける。」と示した。このように示してあることで,授業案を考える時にプログラミング的思考を意識し続けることができる。 シートの右側には教科の「見方・考え方」,単元や本時において育みたい「資質・能力」を書く欄を設けた。これはプログラミング教育のめあてを達成しようとしたあまり,教科としてのめあてが達成されないということに陥らないためである。 教科の見方・考え方のどの部分がプログラミング的思考と一致するのか,あるいは両方1時間の中に盛り込まれているのか,そしてプログラミング的思考を働かせて問題解決を行った結果,教科の資質・能力は育まれたのか,それらを意識しながら教材研究を行う支援になると考える。 (3)算数科における例 本研究においては,2年生と5年生の算数科を中心にプログラミング教育の実践を行う。5年生2月に行われる「円と正多角形」の単元がプログラミング教育に適した単元として学習指導要領に示されており,その単元までにどのような力を培っていけばよいのか系統的に考えるためである。 では,算数科においてプログラミング的思考はどのように発揮されるのであろうか。算数科で育む数学的に考える資質・能力は学習指導要領に以下のように示されている(20)。 日常の事象を数学的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力,基礎的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察する力,数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて柔軟に表したりする力 小学校 情報教育 7 (下線は筆者による) 見通しをもつことは,例えば問題文を読んでいくつかの部分に分け(分解),注目すべき点を抽出し(抽象化),類似性のある既習事項を探し(抽象化),そこで学習した問題解決の手順を目の前の問題解決に利用できないかを考える(一般化)ことである。 基礎的・基本的な数量や図形の性質を見いだし統合的・発展的に考察するというのは,例えば正五角形と正六角形の辺や頂点の数に注目し(抽象化),共通する部分を見いだし(抽象化),正多角形の性質を考える(一般化)ことである。 数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表すというのは,例えば筆算や合同な図形の描き方の手順を考え(アルゴリズム的思考),ステッ57
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