001総教CR030517R1研究論文(木村)
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この手順はプログラミングをするとき以外にも有効な手順だと言えそうである。そしてこの手順の中で,分析したり,細分化したり,細分化した作業の手順を考えたりするときに必要な思考が,【思考力・判断力・表現力等】にあるプログラミング的思考である。 【知識・技能】 身近な生活でコンピュータが活用されていることや, 問題の解決には必要な手順があることに気付くこと。 【思考力・判断力・表現力等】 プログラミング的思考 【学びに向かう力・人間性等】 発達の段階に即して,コンピュータの働きを,よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度。 これに加え,ITを活用する力の重要性も指摘されている。多様かつ大量の情報を収集するにも分析するにもコンピュータを使う方が便利である。人間が考えた解決策もコンピュータや人工知能,ロボットなどの技術により実現するものがほとんどであろう。コンピュータの働きについて詳しい方がより実現可能なアイデアを出すことができる。つまり上記の問題解決力,情報活用能力,コミュニケーション能力,創造性といった人間の強みを生かすためにも,コンピュータを動かす命令であるプログラミングについて理解する必要があるということである。そこでプログラミング教育で育む資質・能力は「プログラミング教育の手引」において以下のように示されている(7)。 上記【知識・技能】の身近な生活でコンピュータが活用されていることに気付くというのは,コンピュータ(およびコンピュータを動かしているプログラム)の働きが自分たちの生活をよりよくしていると知ることである。コンピュータの仕組みや便利さを知ることや,実際にコンピュータを活用して問題解決をした経験が,【学びに向かう力・人間性等】にあるような,将来もよりよく活用していこうという姿勢につながると考えられる。 問題の解決に必要な手順というのは,先述した①~⑦のような手順だが,これはコンピュータでプログラムを作って問題解決する時の手順であるので,コンピュータを使う使わないに限らずチームで問題解決する場面を想定して,より一般化してみると以下のようになる。 ①問題を発見する ②問題の本質を分析し,解決策を考える ③解決策のうち,チームでやるべき仕事を取り出す ④やるべき仕事の大まかな設計図を作る ⑤大まかな設計図をより具体的な作業に細分化 し,適性に応じて協力者に分担,指示する 総則 第1章 第2の2の(1) 各学校においては,児童の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活用能力(情報モラルを含む。),問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力を育成することができるよう,各教科等の特性を生かし,教科横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。 総則 第1章 第3の1の(3)のイ 情報活用能力の育成を図るため,(中略)あわせて各教科等の特質に応じて,次の学習活動を計画的に実施すること。(中略) イ 児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動 (下線は筆者による) 小学校 情報教育 3 ⑥⑤をさらに協力者が,自分自身が実行できる手順に組みなおす (⑦はコーディングをする場合に限定される) (2)プログラミング的思考とは 既に述べたようにプログラミング的思考はプログラミングをする場合に限らず有効な思考である。現に議論の取りまとめの「プログラミング教育とは」の中においても,「将来どのような職業に就くとしても時代を超えて普遍的に求められる力としてのプログラミング的思考」(8)と,その普遍性が示されている。 また学習指導要領総則でも以下の二つの文において,プログラミング的思考が様々な学習の基盤となる資質・能力であることが示されている(9)(10)。 まず,第1章第2の2の(1)では,情報活用能力が学習の基盤となることが示されている。そして,その育成のためには,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力,すなわちプログラミング的思考の育成が必要であることが第1章第3の1の(3)に示されている。この学習指導要領には,コンピュータに意図した処理を行わせるためと記述してあるが,そのためだけのものではなく,他の様々な問題解決場面にも有53 (下線は筆者による)

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