ト 試験情報セキュリティマネジメント試験ITパスポー 右側の情報処理技術者というのは,アプリやソフトといったシステムを作る側である。いわゆるIT企業で働いている人たちだが,そういった人たちにどのようなスキルが必要なのかを示している。また,図の左側に示されているのは,ITを利活用する者,つまり使う側である。その試験内容を見ると使う側に必要とされるスキルがわかるのだが,ITのセキュリティに関するスキルや,AIなどの新技術に関するスキルを問う出題がされている。これらのスキルがあれば,例えば情報漏洩事故や情報消去事故が防げるので確かに必要なスキルと言える。 各種試験52 図1-1 情報処理技術試験種類(情報処理技術推進機構) 図は一部抜粋 ①お客の悩みを聞く ②悩みの本質を洞察,分析し,解決策を立案する ③解決策のうち,情報システムでやるべき部分を抽出 する ④やるべきことのざっくりした設計図を作る ⑤ざっくりした設計図を,もうちょっと詳細な設計図 や日本語による指示に細分化する ⑥⑤をさらに,コンピュータにとってちょうど良いサ イズに細分化する ⑦適切なサイズになった指示は,日本語で書かれてい るだろうから,コンピュータが理解できるプログラ ミング言語に翻訳する 一般にプログラミングといった時に思い浮かべるパソコンの前で英語や数字の文字列を打ち込む作業は(以下,コーディングと言う)部分的なものでしかない。 プログラマが担当するコーディングは⑦に該当し,その前にもいくつかの工程が必要なことがわかる。例えば①②にあるように,顧客の悩みの本質を抽出するためのコミュニケーション能力や情報分析能力も必要になる。 以上のことから,様々な力を駆使して問題解決のためのITを作る側の人材と,人工知能などのITをブラックボックス化せずに理解しよりよく使う人材とが求められていると言える。経済産業省も,決してコーディングをするプログラマのみを重要視しているわけではないことがわかる。 第2節 日本が目指すプログラミング教育 (1)プログラミング教育で育む資質・能力 第1節で述べた流れの中で,2016年4月に文部科学省が小学校でのプログラミング教育必修化を検討すると発表した。そして「小学校段階における論理的思考力や創造性,問題解決能力等の育成とプログラミング教育における有識者会議」(以下,有識者会議)の中でプログラミング教育の概要が整理された。 議論の中で,人工知能と比べ人間の強みとは何かということが述べられている。これは人工知能が発達し様々な仕事が自動化していく中で,人間が担う仕事は何かを念頭に置いているのだろう。人間の強みは,以下のように示されている(5)。 人工知能は,与えられた目的の中で,命令に従って処理をすることは得意である。何万時間であろうと,どんなに面倒であろうと文句も言わずに処理し続ける。しかし,目的やその解決のための命令を考えることができるのは人間だけである。解決策を考えるにも現状を捉えたり,関係者の意向を聞いたりと情報を分析する必要がある。宗教も文化も言語も違う人たちが共存する社会において,より多様なニーズや条件が入り混じる中で,目的に応じて必要な情報を抽出し,分析することは人工知能にはできない(6)。分析結果を基に自分のアイデアを創造し,多様な他者と協働しながらよりよい解決策を見いだすことができるのも人間の強みである。 人間は,感性を豊かに働かせながら,どのような未来を創っていくのか,どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考えることができる。 小学校 情報教育 2 ITの安全な利活用をでは,このシステムを作る側のスキルがプログラミングなのかというとそうではない。岡島が述べているプログラミングに必要な工程(4)を以下に示し,それをもとに説明する。 ITを利用する者推進する者基本的知識技能すべての社会人共通的知識高度な知識・技能応用的知識・技能応用情報技術者試験基本的知識・技能基本情報技術者試験情報処理技術者
元のページ ../index.html#4