図3-12 明示的にするカードの使用例 68 このプログラムでは,ネコが1から順に数を数えていって,「条件:かずを3で割った余り=0」の時に「『こんにちは!』と1秒言う」ようになっている。倍数の性質のうち,3に整数をかけていって探せるという部分を捨象し,3の倍数は3で割り切れるという部分を抽象することで,問題解決に至ることができた。この後,同じプログラムを使い,「5の倍数でこんにちは!というプログラム」「3と5の公倍数でこんにちは!というプログラム」へと応用,発展させる「一般化」を行っている。 授業の終末に行った児童の振り返りでは,算数に関する記述と,プログラミングに関する記述が見られた。算数に関する記述は,「3の倍数を3で割って余りが0だと考えられることがわかった」「倍数や公倍数は割り算でも考えられるとわかった」などである。プログラミングに関する記述は,「組み立てることができるととっても達成感があった」「いろいろなものを組み合わせるのは難しいと思った」などである。どちらの記述も偏った人数ではなく,ほぼ半数ずつであった。また,両方の内容を含む記述をしている児童もいた。 以上のことから,授業の中でプログラミング的思考が働いており,その活動が教科の学びをより確実なものにしていることが読み取れる。 さらに「むずかしかったけれど,楽しい」「いっぱい考えて楽しかった」「達成感があった」などの記述も多く見られ,難しい課題にあきらめずに取り組んだことに楽しさを見出していることがわかった。 (2)5年生「プログラミング体験」 この単元は,「円と正多角形」の学習を行う前に児童の成長を見取るために行った単元であるが,これまで行った実践とプログラミング的思考を関連付けることを意識して行っている。なお,算数科としては「図形の特徴を根拠にしながら,プログラムの意図を説明すること」をめあてとしており,知識を活用する時間として扱っている。 授業の導入は,二十二角形の模様とそのプログラムを見せることから行った。自分で書こうと思うと大変な模様を倍数のプログラムよりも少ないほんの数行のブロックで書けることを知った子供たちは,「プログラムはすごい」「やってみたい」と思えたようだった。 そしてまず簡単な図形,正方形から描くために,「分解」「抽象化」「アルゴリズム的思考」を働かせるように促した。以下,そのやり取りである。 小学校 情報教育 18 T「(【わける】のカードを示しながら)正方形ってどんな特徴がありますか。」 C「辺の長さがすべて等しい。」 C「角がすべて直角。」 C「辺が4本。」 C「角が四つある。」 T「なるほど。①ロボットの動きを考えた時も,どんな動きが必要か,最初に分けて考えましたね。では,キャラクターに正方形を描かせるとき,どの特徴を使って描きますか。②倍数の時はかけ算で考えるっていう特徴は使えなくて,割り算で考える方法を選びましたね。 (【えらぶ】のカードを示す)」 C「辺が4本あること。」 T「それをつかってどんな命令をしますか。」 C「5cmとかを4回言う」 C「(直角なので)90°曲がるように言う。」 T「なるほど。そんな風に必要な動きを選んで,正しい手順を作ってください。(【ならべる】のカードを示す)」 下線①②は過去の体験と本時の体験,そしてプログラミング的思考を関連付ける言葉である。また,ある思考にはどんな名前がついているのか,カードを用いることで明示的にしている。カードを用いた板書は,図3-12に示しておく。 授業の終末に行った振り返りでは,以下のような記述がみられた。分類して示す。 【プログラムの多様性】 ・プログラムはあっていれば,様々な作り方があるのだとわかった。 【一般化】 ・少しの工夫で違うものに変わるのが面白い。 ・ちょっと変えれば違うものになるのだとわかった。
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