001総教CR030517R1研究論文(木村)
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このプログラムを実行し,どこかがおかしいと児童が感じたことで,プログラミング教育として重要な活動に進んだ。自分が構築したプログラムを評価し,そのアルゴリズムを見直していく活動である。その際の指導者と児童とのやり取りを以下に示す。 C「どうやってかえればいい。」 C「3の倍数の時ってあればいいのに。」 T「あるかな。」 C「ない。」 C「つくればいい。」 C「とりあえずいれてみよう。」 T「なるほど,①何回失敗しても大丈夫だから, とりあえず入れてやってみるのもありだね。」 下線①は,間違えてもよい雰囲気を作り出すた 図3-10 演算部分のブロック 児童はこれまでの学習で,3の倍数を探すとき C「このままだと,【もし数が3のとき】だと3のときしかこんにちはと言わないので,3のあと,ずっと数しか言わない。」 T「かず=3ってどういうことかな。」 C「かずが3の時。」 T「かずが3の時しか,ってことだね。やってみて。」 C「できたできた。3の時しか言わへん。」 T「では,どこかをかえて,倍数のプログラムにしたい。3のときっていう指示をしているプログラムはどこかな。ここかな。」 C(【かず=3】でうなずく。) T「そこを変えて作り変えてください。使えそうなブロックは用意してあります。」 めに重要である。プログラミング教育においては,自分が作ったプログラムを目的に合わせて評価し,失敗の原因を探して改善していくことが大切だからだ。失敗を恐れて前に進めないのでは,評価してまた構築し直すという活動になりえない。もちろん行き当たりばったりでは論理的な思考は身につかないので,偶然うまくいった場合でも「このプログラムで成功したのはなぜだろう」と帰納的に考えさせることが必要になる。 この後,児童は【かず=3】の演算部分を変更してなんとか3の倍数を表現しようと試みた。その際使えるブロックは,指導者があらかじめ提示している。それを図3-10に示す。 は,3,6,9…と3の段のかけ算をして探してきた。教科書に書いてある定義も「3に整数をかけてできる数を,3の倍数といいます」となっており,多くの児童が「倍数はかけ算」とイメージしていたと思われる。しかし,Scratchにある部品ではそれがうまくできない。そこで,「たし算でできないかな」「ひき算ではどうだろう」などと「倍数」の性質の様々な部分に着目していた。「分解」の思考が働いていると捉えられる。そうしてできたプログラムを図3-11に示す。 67 図3-9 児童が最初に作ったプログラム 図3-11 3の倍数でこんにちは!というプログラム例 小学校 情報教育 17

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