001総教CR030517R1研究論文(木村)
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62 初めてこのような活動を行ったのだが,予想以上に細かい手順に分解していたので驚いた。分岐や反復のイメージをもてていることも確認できる。なお2年生は5~8個の手順に分解できていたが,学年ごとに分解できる細かさや,扱える手順の量に差があることがわかった。 (1)2年生の実践計画について 2年生は,「三角形と四角形」の単元においてビジュアルプログラミングソフト(本研究においてはScratchを使用しているため,以下すべてScratchと記述する)を使用して正方形と長方形を描くことをゴールとしている。 この学習では,キャラクターに四角形を描かせるための「右に2㎝すすむ→上に2㎝すすむ→左に2㎝すすむ→下に2㎝すすむ」というような順次処理のプログラムを組む活動を行う。つまり,四角形を描くために必要な動きを分解し,アルゴリズム的思考を発揮して正しい順序を構築する必要がある。 そのためにまずは,ある大きな動きを分解し順次処理のアルゴリズムを考えることに慣れる必要があった。そこで,「たし算とひき算のひっ算」の単元において,筆算の手順をステップチャートに表す活動を行った。 「たし算とひき算のひっ算①」では,筆算以外の加減の方法と筆算を結び付けてとらえたり,繰上がりや繰り下がりの仕組みについて,数え棒などを使って理解を深めたりすることが重要である。そこでステップチャートの活用は,指導者が黒板に児童の発言を整理する場面にとどめた。 「たし算とひき算のひっ算②」では,すでに児童が筆算の利便性に気付いていることを前提としたうえで,既知のやり方をどう改善すればよいのかを考えるという課題意識を児童にもたせた。そして課題に合った筆算の手順を構築する自力解決の場面で,児童が考えを表現する手段の一つとして活用した。 なお,「三角形と四角形」の単元でのScratchを用いた活動のための事前の指導は行わないことにした。しかし,ICTスキルに差がある実態を踏まえ,マウス操作と半角入力ができれば使えるような教材を準備し,それら技能を習得する時間15分を含めた60分を授業時間とした。 (2)5年生の実践計画について 小学校 情報教育 12 5年生は,「円と正多角形」の単元において,Scratchを用いて正多角形を描くプログラムを作成することがゴールになる。まず正方形を描くプログラムを作成し,それを利用して正三角形や正六角形やその他の正多角形を描くプログラムにしていくという活動の流れを想定している。 この活動を算数科の限られた時間数の中で成立させるためには,2年生のプログラミング体験同様一定レベルのICTスキルが前提となる。Scratchを使うためには,半角入力,マウス操作,ファイル管理の技能が必要になる上,扱う内容もブロック(命令)の種類も2年生のそれより高度になるからだ。これら技能の習熟が足りない児童が多いクラスでScratchの活動を行うと,コンピュータの操作に手間取り,その授業のめあてにせまる思考をする時間は減ってしまう。5年生の実態と内容の難しさをふまえて,段階的にScratchに慣れるよう実践を計画した。 そのために行ったのが,「整数」の単元において「ネコが数を1から数えて,ある倍数や公倍数の時に特別なリアクションをする」プログラムを考える活動である。この時間ではまず各ブロックのイメージを児童がつかむ必要があったため,指導者の指示のもと各ブロックの意味を確認しながらプログラムを組むようにした。そして児童の活動の中心は,プログラムの一部分を修正することに限定するようにした。 「合同な図形」の単元は,「円と正多角形」でのプログラミング体験をより効果的なものにするため行った。両単元には共通するプログラミング的思考が働く。それは類似性からパターンを見つけて別の場合にも利用できるようにする「一般化」の思考,そして共通点を見つけ出して必要な部分を選ぶ「抽象化」の思考である。ステップチャートでもプログラミング体験でもそれらの思考を発揮し,可視化して捉えることが,より確実なプログラミング的思考の育成につながると考える。 「円と正多角形」は2月に行う単元であるため,本論文作成時期の都合から本年度の研究に反映することができない。そこで代わりに,長方形や平行四辺形などの四角形を描くプログラムを作る活動を行い,「整数」の単元の学習によって,Scratchを用いた活動がスムーズに行えるようになったかどうかの検証を行った。長方形や平行四辺形の描き方については4年生で学習しており,算数科としては新たに知識や技能を習得することなく取り組める内容であるため,プログラミング的思考や

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