当に有効であるとの実感を持てず,②また,なぜ有効 なのかを明晰には理解せず,③したがって,どのよう な場面で有効なのかを判断することができず,④さら に,教わったのと異なる対象や場面に適合するよう自 分でアレンジして実行できるほどにはその使用に習熟 してはいないがゆえに,教わった方略を自発的にほと んど用いません。これら4つの関門全てをクリアする 明示的な教え方をしてはじめて,子どもは学んだ内容 をさまざまな問題解決に自発的かつ創造的に活用する のです。 この方略とは,問題解決のための方法である。「アルゴリズム的思考」「抽象化」といったプログラミング的思考が様々な実生活の問題解決に応用されるようになるには,それらの有効性を実感し,なぜそれが有効なのかを理解するように明示的に指導する必要がある。 A問題の正答率は96%,B問題の正答率は18%であった。B問題の誤答内容との割合を見てみると,中央公園の面積を求める際に公園の隣の道路の長さ150mを高さと認識することができず「底辺×斜辺」として計算している児童が34.4%いる。つまりおよそ3分の1の児童に転移が生じなかったことになる。 その上で奈須は,以下のように述べている(21)。 (2)転移させるためには プログラミング的思考が応用されるとは,厳密にはメタ認知的活動のプロセスにプログラミング的思考が組み込まれることを指す。 メタ認知的活動とは,対象に対する自分の思考や行動を俯瞰し,自分の思考や行動が目的に合致するか評価し(モニタリング),モニタリングの結果を受け思考や行動を調整する(コントロール)働きである(22)。図に示すと図2-6のようになる。 子どもは単に方略を教わっただけでは,①それが本 図2-6 メタ認知的活動のプロセス このメタ認知的活動でモニタリングされたりコントロールされたりする思考や行動,あるいはモニタリングしたりコントロールしたりする思考そのものの方略に関する知識をメタ認知的知識と呼ぶ。言い換えれば,どう考えればよいかという引出しがメタ認知的知識である。このメタ認知的知識にプログラミング的思考が組み込まれ,かつメタ認知力が育成されれば,プログラミング的思考が状況に応じて適切に選択され働くようになると言える。 では,どのように組み込み,どのように育成すればよいのであろうか。 深谷によると,まず,どのように考えるかという方略の知識をもつことが不可欠である(23)。そもそも方略を知らなければ使うことができない。そこで,メタ認知的活動のプロセスにプログラミング的思考が組み込まれるようになるためのポイントの一つ目として明示的に指導する必要がある(24)。どのように考えているのか,どのように考えることでよりよく理解したのかなど,「やることの順番がわかるように図をかこう。」「比べてみたんだね。」などとはっきりと示すのである。思考に名前をつけ一つの方法として自覚させることにより児童は,今まで無意識的にしていた自分の思考を意識し,方略として獲得することができる。これについては奈須も,以下のように述べている。 ム的思考」「抽象化」などとしっかりと名前を付け,「いくつかの部分に分けることを分解という」のようにどんな道具なのかを整理しておく必要があるというのである。 ポイントの二つ目は,有効性を実感させることとされている(25)。ある方略がどんな時に,どう有効なのかがわからなければ,使おうとはしないであろう。また,方略を変更しようにも,どの方略を用いればよいのか判断ができない。 方略の有効性を実感するためには,まずはその方略を獲得した時の課題と類似の課題を自身で解決することである。その上で,学んだことを土台としてさらに発展的な課題やつまずきやすい課題に対して問題解決を行う授業が有効である。習った方略をそのまま適応しても解決できない事態に追いこまれることで,どう工夫すればよいのか,そこで子供たちに手渡したつもりの読解の着眼点なり方略,いわば読解の「お道具」に明確な名前がついていないこと,さらに子どもたちの「お道具箱」が一度も整理されてこなかった点にあります。 つまり方略=お道具には「分解」「アルゴリズ小学校 情報教育 9 59
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